岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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後藤 清広氏の想い感じます。髙橋 この時代、ASC、MSCなどの国際認証はデカいですよ。それを指定してくるようなマーケットが出てきているじゃないですか。同じ品種でも、認証を取っている産地に鞍替えするようなことが、簡単に起こってしまう。後藤 環境や気候危機に対する関心が高まり、消費者の意識も大きく変わっています。それに、「持続可能な食材を」という大手企業の社内食堂で使ってもらうなど、環境に配慮した商品への注目度が最近、ものすごく上がったような気がします。石巻の人たちにもASCを取ってもらったことで宮城県でも増えましたし、本当に良かったと思っています。日本初といっても、続くところがあって初めて「初」と言えますからね。今は、国内で16カ所にASCが広がりました。髙橋 国際認証が、養殖だけでそんなに増えたんですか。増えれば、ASCの認知度も上がっていきますね。長谷川 漁業、水産業の世界にも国際認証というグローバル・スタンダードが入ってきているように、稼ぎ方、ビジネスも、時代とともにどんどん変わっています。水産業、漁師の皆さんは、変わっていくことがあまり得意ではなかった部分があると思います。そこでわれわれフィッシャーマン・ジャパンは、「カッコよくて・稼げて・革新的」な、“新3K産業”の漁師、水産加工業者になって、自分たちの背中で見せていこうとやっているんです。まずは自分たちでやってみて、「このやり方がうまくいったので一緒にやりませんか」と漁師界、漁業界、水産業界の皆さんに訴え、横展開しています。その意味漁業の未来をつくる息の長い取り組みには、しっかりとした理念と哲学、そして企業家精神が必要です。だからこそ、フィッシャーマン・ジャパンさんには期待しています。(左)認証を取得した水産物には「ASCラベル」が添付される (下)ASC取得の際には、「労働環境」や「地域社会との関係」も審査されるで、まさに稼ぎ方を変えるというところに力を入れています。後藤 フィッシャーマン・ジャパンさんのチャレンジで事業価値が高まれば、若い人の目標にもなります。長谷川 ありがとうございます。最近のチャレンジは、コロナ禍の中で仙台空港内にオープンさせたカキと海鮮丼の店「ふぃっしゃーまん亭」です。ASC、MSCの海産物として海鮮丼を出せるようにするため、加工会社さんにCoC認証(※3)を取ってもらうなど、タッグを組んでおいしい丼ができる仕組みを開発しています。それに、キャッシュレスによる省人化などDXを進めていて、将来は人に頼らないオペレーションで全国展開できないかと考えています。料理人不足や鮮度保持の問題など、魚食にまつわる課題を「仕組み」で解決することは、流通革命につながるチャレンジなんです。つまり、稼ぎ方を変えていくことに関して、今までの稼ぎ方は何だったんだというところをきち次の時代を見据えて稼ぎ方を変えていく必要がある、という論点が浮かび上がってきました。では、その次の時代を担う人材をどう確保し、どう育てていくのか。最後に「人材」という観点で議論いただきたいと思います。後藤 被災直後は若い人がほとんどいなくなりましたが、ASC認証を取った後、若い人が増えたのです。今は30代の人が20人近くいます。今の若い人は、割と朝早いとかキツイ仕事を負担に感じていないみたいで、むしろ、海を楽しんで仕事するとか、品質の良い物を作っていろいろと発信したりオンラインイベントを企画したりして、やりがいだったり、将来性だったり、仲間が増えることだったり、そうしたことの方に価値を見いだしているのだと思います。やり方次第では稼げますし、やりがいのある環境さえあれば、やりたい若者がたくさんいることを、逆に私たちが教えられました。私たちと価値観が違うんです。長谷川 良いお話ですね。若い人は、県外からも来ているのですか。んと見直して、自分たちで体験、体感しながらやっていくことが大事なんだと思います。96夢とロマンだけではなかなかやっていけないですよやりがいや将来性に若い人は価値を見いだす

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