岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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それぞれの領域で革新的な取り組みを続ける3人の漁業イノベーターが、“三陸の漁業”をテーマに議論。未来を開く鍵はどこにあるのか。事業計画も無いまま、「食品でもサプリメントでもいける。化けるかもしれないぞ」と思ってやっていました。こうした取り組みを進めていくうちにだんだんと認知度が上がり、まず首都圏で売れ出し、全国に広がっていった感じです。その後は健康ブームが後押しをしてくれて、アカモクの高い機能性に注目が集まって今に至ります。長谷川 フィッシャーマン・ジャパン印の商品開発は、いろいろとやっていますが、めちゃくちゃ当たったという商品はあまり無いです(笑)。日本人があまり魚を食べなくなっていることは、もはや東北とか被災とか関係無く、全国共通の課題です。直近では、東日本大震災よりコロナ禍の影響の方がキツイという水産業関係者もいます。こうして消費が落ち込んでいる中、スポッ日本初のアカモク(※1)専門総合メーカーとして、カキ漁師を組合員に1998年に設立。アカモクの収穫から販売まで一貫して取り扱う。髙橋代表理事は「脱水産加工」を新たな経営方針に掲げて商品ラインアップの多角化を進め、サプリメント事業にも注力。南三陸町戸倉地区でカキ養殖を営む漁業者35人の部会で部会長を務める。2016年には日本で初めてASC認証(※2)を取得。販路拡大によりモチベーション、品質・単価をアップした。また、カキ養殖の漁具「いかだ」の過密を解消し、労働環境も改善。東日本大震災後、「漁業をカッコよく」をコンセプトに集まった東北の若手漁師集団。2014年に法人化し、人材育成、PR、販売、環境整備など多角的に展開する。長谷川氏はヤフー株式会社に所属しながら立ち上げに携わり、事務局長として活動中。ト的に課題解決策を打っています。われわれが運営するオンラインショップでは、魚を買ってくれたらZoomでさばき方を無料で教えたり、「普段居酒屋で食べてる魚、食べてないでしょう」と訴求したり、「鮮魚ボックス」を企画したりして、めちゃめちゃ売りました。世の中の流れに対して、ニュース性だったり、ストーリーだったり、何を当てるのかというところを、これからの漁業者、水産業者はしっかり考えていかないといけないと思います。後藤 南三陸町の志津川湾でカキの養殖をやっています。養殖いかだの削減は、東日本大震災後の6月のカキ部会全体会で決めました。「20年後も通用するやり方に変えていかなければならない。1年の生産期間で品質の高い物を作れば、コストは下がり、単価は上case294COLUMN岩手アカモク生産協同組合 始めに皆さんの事業内容を簡単にご紹介いただき、その中で「商品価値の向上」にどのように取り組んでいらっしゃるのか、お話しください。髙橋 それまでは廃棄していたアカモクの商品化に取り組みました。2年間くらい研究した後、いざ売り出してみると、知名度が無くて10年くらいは全然売れなかったです。結局、人は知らないものは食べないんです。まず知ってもらうことが先決ということで、アカモクという名前の売り込みに奔走しました。それと、事業開始時から取り組んでいたのが、機能性に関する大学との共同研究です。マーケティングも岩手県山田町宮城県漁業協同組合 志津川支所 戸倉出張所カキ部会宮城県南三陸町一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン ➡P.62宮城県石巻市生産量より品質を追求し生産性をも上げた未来を語ろうを語ろう漁業・水産髙橋 清隆氏後藤 清広氏長谷川 琢也氏加工業稼ぎ方の変革、若い力の育成“挑戦”が漁業の未来をつくる

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