岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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監修委員座談会風評の回避、確立している栽培ノウハウやマーケットなど、さまざまな条件を考慮した上でコチョウランの栽培に乗り出し、しかも視察もしっかり行っています。ビジネスプランも準備も、ずば抜けて優れた事例です。大阪から福岡までの酒蔵を視察したり、ニーズに応えて、甘酒からリキュール、お菓子、酒かすを使った土壌改良まで手掛がけたりと、自らの熱意と多くの人の支援で事業を再開。10年ぶりに浪江町での酒造りも始めました。柳井氏 詳細は➡36ページ詳細は➡38ページことで、東北のブランド力を上げることにつながると思います。柳井 海外を視野に入れるということでは、宮古地域大夢栽培研究会で作っている大玉のリンゴなども、中国や香港への輸出が考えられます。倉庫やロジスティクスなど輸出関連産業のイノベーションを実現すると、農産物の輸出にもチャンスが広がると思います。産業の集積や連関について、額田さんはいかがですか。た優れた事例だと思います。「新陳代謝」という面では、事業承継がうまくいかず、まちのにぎわいが失われることが問題視されていますが、そのヒントも、この事例集から得られると思います。例えば、キャッセン大船渡の商店街は、店舗の所有と利用を切り離し、テナントを柔軟に入れ替えられる仕組みにしています。また、株式会社巻組は、空き家ができると、地域コミュニティと連携をとりながらシェアハウスなどにリノベーションし、コミュニティの外の方の定住促進に貢献してきました。弓削 町工場の連携などでは、世代の違いが主な原因だと思いますが、技術が盗まれるとか、顧客を取られるといった懸念が生じて、うまくできないことがあります。そのあたりが解決できると、より高い付加価値を生む連携につながると見ています。田村 産業集積には、オープンであることと、信頼をベースにしていることが条件になると思います。信頼があれば、技術や顧客を取られるといった心配も無くなります。また、コロナ禍でネットへの依存が高まっていますから、信頼の置けるプラットフォームをつくることも重要です。9かつらお胡蝶蘭合同会社額田 産業集積については、「産業連関」と「新陳代謝」の両面で面白い事例がありました。「産業連関」の面では、広域の分業ネットワークの中で上手に自社の立ち位置をつくることと、地域の中でうまくつながりをつくることの両面が大切です。例えば、菊池製作所は、本社のある東京の多摩地区のネットワークと社長のご出身地である福島の工場群をつないで、付加価値の高いものづくりを実現され福島柳井氏 株式会社鈴木酒造店福島ここに注目!ここに注目!柳井 産業集積について、私は地域の経済循環をイメージしているので、いろいろな業種の横断的で重層的な連携をつくることが必要だと考えています。そして、人材については、NPOなどと連携して補ってもらうことが重要です。これまではフォアキャスティングで、確実にできることだけを自治体などでは行ってきました。しかし、人口減少の時代にあっては、夢を語ることが大切なので、バックキャスティングの考え方を取り入れることが求められます。多少の失敗をよしとしながら、軌道修正にも積極的に関わるという関係、つまり、お互いの顔が見える関係をつくることによって、足腰の強い地域づくりを実現してほしいと願っています。産業集積が生み出すネットワークと付加価値企業の横断的な連携で足腰の強い地域づくりを

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