岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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被災3県で見る連携による地域産業活性化生ごみ回収施策・ビジョン策定などで協力課題の聞き取り・説明会の開催バイオガス・液肥の生成町内での取り組み普及・推進などで協力運営バイオガスを発電に使用生ごみを分別液肥を販売南三陸BIO被災3県の連携事例③企業×自治体×住民官民連携で取り組む持続可能な地域づくりアミタ株式会社連携図南三陸町アミタ住民可燃ごみ処理コスト削減地域内で資源を循環ミタ株式会社が運営している「南三陸アBIO」では、南三陸町で排出される生ごみを回収して発酵させ、バイオガスと液肥を製造。バイオガスは発電に使用し、液肥は地域の農家や、家庭菜園を行っている住民などに還元されている。2015年の開設から、発電量や液肥の生産量は伸びていて、アミタでは、官と民と地域の連携に手応えを感じている。例えば、回収される生ごみからは、肉の骨や貝殻のように発酵できないものを除く必要があるが、そうした異物の混入率は、一般的には5%程度になる。しかし、南三陸町では1%以下にすぎない。「生ごみを資源化して地域に還元することで、環境保全型のまちづくりを実現し、可燃ごみ処理コストも削減する」という、南三陸町のビジョンへの理解や共感が広がった成果とアミタは見ていて、思いやビジョンを共有することが、何よりも大切としている。一方で、アミタや南三陸町では、分別の必要を訴えるポスターやチラシを地元の高校と連携して作成したり、説明会を開催したりといったことも行っていて、住民に連携を促す取り組みも重要としている。今後の課題は、住民に限らず、事業者の参加率も増やすことで、アミタでは、産官学民の連携をさらに進める予定だ。宮城県南三陸町(南三陸BIO)1977年創業。持続可能な経営・地域運営を目指す企業や自治体を統合的に支援する「社会デザイン事業」を展開。東日本大震災の復旧作業のボランティアとして、宮城県南三陸町との関係が生まれ、2012年に南三陸オフィスを開設。同町の「バイオマス産業都市構想」の策定に協力し、2014年には、バイオガス事業の実施協定を締結。2015年からは、地域の生ゴミを資源化してバイオガスと液肥を生成する施設「南三陸BIO」を運営し、自治体と連携して、東日本大震災後に南三陸町が目指す「持続可能なまちづくり」に取り組んでいる。る人も同時に必要だ。バイタリティーがあり、取り組みに対する強い思いや熱意を持った人がいると、連携がうまく進む確率は高いようだ。 宮城ワーケーション協議会や、食のみやぎ応援団にも、活動の中心になっている人や企業がいる。黒川温泉でも、Uターンや婿入りなどで旅館の二代目、三代目となった若手経営者がリーダーとなって、黒川温泉のブランド化を推進した。 コロナ禍によって、DXの必要性が改めてクローズアップされ、デジタルの利用がさらに進んだ。緊急事態宣言などで、外出や人との接触が控えられ、リモート会議は当たり前に、オンラインショッピングの需要も高まった。 このような状況の中で、東北のデパートの中には、オンラインショップとリアル店舗の連携に力を入れているところがある。具体的には、オンラインショップで商品に関する情報を提供、郊外のリアル店舗に誘客し、リアル店舗での購買行動をオンラインショップにフィードバックするといったもの。オンラインショップとリアル店舗とをシームレスにつなぎ、顧客満足度の向上を図る戦略だ。 東日本大震災では、みんなで動き、働くことで復興にこぎつけることができたが、コロナ禍からの復興は、動くことが何かと制限を受けるだけに、別の方法や新しいアイデアを見つけることが求められる。また、人口減少が続き、労働人口も減る中では、企業や自治体が単独でできることは、ますます限られてくるだろう。そのために、連携やデジタル化はさらに重視されることになり、新しい連携やデジタルの活用が登場するに違いない。 宿泊業とフィットネスクラブ、飲食業と医療などの連携から、家電メーカーと観光業界といった意外な業界同士の組み合わせまで、さまざまな連携が検討されるだろう。東北の農産物や水産加工品を事業者が連携して、オンラインショップで海外の消費者に届けるといったことも、被災直後に企画されたが、実現は難しかった。しかし、これからなら可能かもしれない。 連携の可能性は大きく広がりそうだが、成功するにはやはり守るべきことがある。繰り返しになるが、連携という美名に流されず、利益や資金、将来性などを冷静に判断し、価値観が共通する人や企業と目指すべきところを共有し、覚悟を持って協働することが重要だ。東日本大震災からの復興が補助金頼みでは限界があるのと同じで、相手任せの連携では思ったような成果は期待できないだろう。89ウィズコロナ時代の新しい連携の在り方とは

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