岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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被災3県で見る被災3県で見る連携による連携による地域産業活性化 地域産業活性化 協力 株式会社帝国データバンク仙台支店 情報部部長三角謙二氏仙台支店 情報部 部長補佐紺野啓二氏東日本大震災からの復興に当たっては、NPO等の団体や産官学の連携等、企業間にとどまらない、さまざまな連携が生まれている。これらの連携による効果や、成功のポイントについて、東北の企業活動を長年にわたって調査してきた株式会社帝国データバンクの担当者に伺った。 東日本大震災の被災地では、復興に向けた本格的な取り組みが始まるとともに、企業の間で連携の必要がいわれるようになった。被災によって企業活動が休止を余儀なくされている間に、販路が失われてしまったが、その再開拓は1社の力では難しい。そこで連携して臨もうという流れができた。 特に水産加工業は、福島第一原子力発電所の事故による風評もあって、販売先の確保だけでなく、東北産商品への理解や支援を得ることも求められる。そのため、共同でオンラインショップを立ち上げるケースが少なくなかった。中には、大手企業が資金面などで協力するケースもあった。 しかし、その結果は大半がはかばかしくなかった。当初は支援のために利用してくれる消費者もいたが、次第に尻すぼみとなり、ひとり立ちまでにはなかなか結びつかなかったのだ。被災から時間があまりたっていない時点での取り組みだったので、仕方のない面もあるが、やはり連携に対する考えが根本的に不足していた。連携することや、オンラインショップを開設すること自体が目的になってしまい、連携のための連携になっていたようだ。 このような例から分かるのは、連携に参加する企業には、当事者意識が必要ということ。「とりあえず参加する」「連携に乗り遅れたくない」といったような理由で連携しても、成功にこぎつけるのは難しいだろう。企業間連携だけでなく、官民連携や産官学連携でも、民である企業が、官や学に頼らず、自ら主導することが求められる。 官は連携の枠組みや制度をつくることができる。学は技術や情報を提供できる。しかし、官も学も事業の経営はできないから、企業が主導することが大切だ。官や学の役割は、あくまで連携を後押しする支援だということを忘れてはならないだろう。 現在、宮城県で活動している宮城ワーケーション協議会も、民がけん引し、官が追随している団体だ。ワーケーションとは、ワークとバケーションとを組み合わせた造語で、観光地などで余暇を楽しみながら、テレワークすることだ。同協議会は、ワーケーションを通して、宮城県のファンを増やし、観光や移住定住につなげることを目的に活動している。 協議会の共同代表を、インバウンド人材を育てる研修や、翻訳・通訳などの事業を行っている株式会社ライフブリッジというベンチャー企業が務め、名誉会長には県知事、幹事には県内の市長、町長などが就いている。 連携を成功に導くために、当事者意識以外に企業に求められるものには、どのようなものがあるだろうか。整理してみよう。 当たり前のことともいえるが、どのような目的に向かって、何をするかが明確になっていて、参加企業で共有することが重要だ。 一般社団法人食のみやぎ応援団は、食に携わる地元企業が連携し、2012年11月に設立された宮城県の団体。100年先も豊かな自然と資源、魅力ある文化、そして優しさあふれる理想の社会を目指すという理念を掲げ、宮城県の食のプロモーション、商品ブランディング、イベントの企画などを行っている。そして、2021年1月にはSDGs宣言を発表。食品ロスを減らす地場産品の開発や雇用環境の改善に取86連携のための連携では成功はおぼつかない官民連携や産官学連携も重要なのは民の主導明確なビジョンの設定でブレずに連携を推進

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