岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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岩手県久慈市復興はまだまだ道半ば後継人材不足が最大の課題女性が働きやすい環境を追求現在は、2015年に移転した本社・工場を拠点としている現在はカジュアルシャツやワンピースなどを主力生産品目として取り組んでいる東日本大震災の津波の被害からの復興は果たし、現在では事業も順調に推移している。しかし、借入金の返済や人材不足といった課題が残っており、復興はまだまだ道半ば。課題の解決を急がなければならない状況にある。特に大きな課題となっているのは、スタッフの高齢化とその次の世代の後継人材不足。経験豊富なスタッフが持つ高い技術を受け継ぐ若い世代の人材が必要だが、募集を行っても思うように人材は集まらず、有効な打開策を講じることが待たれる。衣類の縫製現場では女性が活躍するケースが多い。久慈ソーイングのスタッフも女性が大半となっている。後継人材不足を解消するためにも、女性が働きやすい職場環境やシステムなどを追求・整備することが必要となる。◆早期復活に向けてシャツ縫製へ伸縮素材を使った水着を縫うためのミシンは特殊な物で入手しにくく、洗って復活させるには最低半年はかかると予測。一般的なミシンなら入手しやすく、早期の復活が可能となるため、いったんカジュアルシャツの縫製へとかじを切った。◆廃業する同業者から設備と取引先を譲受廃業するカジュアルシャツ縫製業者から設備と取引先を譲り受け、さらにシャツ縫製技術のレクチャーも受けた。これによりカジュアルシャツと、半年後に復活した水着縫製の2本立てで事業を立て直した。◆経験豊富なスタッフがそろう経験の豊富なスタッフが多く、主力のカジュアルシャツ以外にもワンピースやブルゾンをはじめ、さまざまな衣装の縫製に対応できる。そうした技術の高さが、大きな強みになっている。衣装の縫製を手掛けてきた。取引先には、岡山県倉敷市の児島地区の事業者もいる。久慈ソーイングの縫製技術は、ジーンズの本場でも評価されているのだ。自社の強みについて、中田氏は「経験豊富なスタッフが多いので、カジュアルシャツだけでなく、レディースのワンピースやブルゾンなどにも幅広く対応できること」と語る。スタッフが15人程度と小規模なため小ロットの注文も受けることができ、小回りが利く点も評価されているようだと分析する。2015年には、本社・工場を現在地に移転。2018年、業態をカジュアルウェア縫製に転換し、再び軌道に乗ってきたところで中田氏が社長に就任した。以後、久慈ソーイングは情報発信や業界関係者との交流などを積極的に展開している。2020年11月、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFW)の展覧会に共同出展。それがきっかけで問い合わせが何件かあり、新規取引先の開拓にもつながっているという。2021年には、岩手県北部の縫製業のイメージアップ・人材育成を目指す「北いわてアパレル産業振興会」に参加。さらに、「東北グランマの仕事づくり」プロジェクトにも参加している。これは、東日本大震災によって仕事・やりがいを失ってしまった東北の女性たちに日々の仕事をつくり出し、「働く喜び」と「明日への希望」を取り戻してもらう取り組み。特別な技能も経験も無い女性が働き、収入を得て、仕事仲間を得られる。そんな場として、久慈ソーイングは雇用創出に貢献している。コロナ禍にあっても大きな影響はあまり無く、復興は着実に進んでいるが、今後の課題はスタッフの高齢化と後継人材不足である。「スタッフは50~60代が中心で、経験豊富という点は強みですが、まったく新しいことへの対応はやはりスムーズにはいきません」と中田氏。若い人材もなかなか採用できないのが現状だ。懸命の取り組みによって、津波の打撃からは立ち直ってきた。しかし、借入金の返済なども控えて復興はまだ道半ばと、中田氏は慎重な姿勢を崩していない。8530成果とポイント年に向けて新商品の開発新規事業の開始作業効率・生産性向上事業内容の発信・PR2030

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