岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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岩手県宮古市年に向けてブランディングで他産地と差別化変化するニーズに対応消費者との接点をつくり、ファンを増やす個々の農家にリピーターはついているが、生産量の増加に合わせて産直やイベントでの露出を増やし、新規客の獲得にも努める。地域として売り出していくためには生産者と消費者との関わりも重要であることから、収穫体験など接点をつくることで子育て世帯にファンを拡大したい。現段階ではイベント出店などの形でのPR活動を中心に浸透を図っている生産拡大を進めるとともに、今後はブランディングに努めるより知名度の高い他産地でも「大夢」は生産されるため、現在の高級路線を維持するのは難しくなる。それでも一般的な品種と同列にせず、「宮古地域復興りんご」としての知名度向上に努め、差別化を図る。10kg箱、15kg箱を購入するような年配客が徐々に減ってきており、より若い年代の人は2kg箱、3kg箱を購入することが多い傾向にある。宮古地域大夢栽培研究会でも2個入りの箱を作るなどして、変化する需要に応えており、世代ごとの幅広い需要形態に対応している。◆産地としての宮古地域をアピール「大夢」は個々の農家がそれぞれ生産から販売まで行い、得意客で売り切っている状況だが、「宮古地域復興りんご」として知名度拡大を図ったことで、宮古地域一体でリンゴ産地としてのアピールができている。◆生産量は年々増加苗木の植え付けを行い、年々木が育つにつれて収量は増えていく。それに伴い、産直やイベントに出回る量も増え、「大夢」の知名度向上が期待できる。◆「特別なリンゴ」としてのブランディングいち早くブランディングに取り組み、「『大夢』といえば宮古地域」というイメージの醸成を図った。今後、県内のほかの産地で「大夢」の栽培が盛んになっても、復興への思いをのせた「特別なリンゴ」としての位置付けが保てる。度研究会メンバーが集まり情報交換を行っている。箱やのぼり、シールなどを作ってブランディングを図り、三陸鉄道や盛岡の商業施設でのギフト販売、道の駅での販売会、地域の祭りでのブース出店によるPR活動も行った。販売会では市内の製菓店に協力を得て「大夢」を使ったパンを販売。道の駅のレストランで「大夢」を使ったパフェを販売してもらったこともあった。生産拡大が見込まれる中、将来的に課題となることが明らかなのは差別化だ。前述の通り産地としては内陸が有名で、今後内陸でも「大夢」の生産量が増えていく。「宮古地域復興りんご」と冠してはいるがリンゴそのものに違いは無く、現在の高級路線を維持していくのは難しいだろう。「産地の知名度がある内陸のリンゴと比べて価格が高いとなると、ちょっとね。市場の動向も見ながら、ある程度そろえていかなくてはいけないでしょう」と勝山氏。「でも、安くして普通のリンゴにしていくのは違うなと。“復興りんご”に位置付けてもらった以上、これは特別なリンゴだという思いは示したいです」。研究会で作ったパンフレットにはこんな一文がある。「震災の厳しさから酸味を伴いますが、復興への情熱が口の中で果汁としてあふれてきます」。岩手県北の沿岸で思いを込めて育てられる「大夢」。その復興の味をかみ締めたい。アンケート調査では「大夢」を「知っている」「食べたことがある」という回答が増加しているが、会長の勝山浩一氏は「私どもリンゴ屋の感覚では、まだまだ浸透は薄いかなと思います」と話す。現在の生産量ではほとんどが個々の得意客で売り切っており、産直やイベントまで出回る数が無いのが現状なのだ。「それでもリピーターはつくのですが新規客が増えない。苗木を植え付けて年々生産量は増えていくので、もう少しすれば浸透していくとは思いますが」と期待を込める。2019年の生産量は地域全体で7t、2020年は9tあり、2021年は12tを目標にする。8329成果とポイント新規のブランド立ち上げ事業内容の発信・PR2030

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