岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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− − 宮古地域大夢栽培研究会ミヤコチイキオオユメサイバイケンキュウカイ 勝山浩一氏[会長] 農業 岩手県宮古市日影町7-23 2014年 301万円(2020年度)、207万円(2019年度)宮古地域4市町村で岩手県オリジナル品種「大夢」を栽培するリンゴ農家らにより、2014年設立。現在は8戸11人が会員として参加。「大夢」の栽培技術向上に関する視察研修、勉強会のほか、イベント出店などのPR活動を行う。◆晩生種の新品種開発の必要性岩手県内で栽培されるリンゴの主力品種は「ふじ」だが、県北沿岸部の宮古では晩生の「ふじ」の熟期が遅れる。そのため、「ふじ」を補完する品種が求められており、新品種を開発、誕生させることは、この地域の生産者たちの願いだった。◆リンゴ産地としての知名度不足県内では奥州市や盛岡市など内陸がリンゴ産地として知られ、宮古でリンゴ栽培をしていることは知られていなかった。また、30年ほど前は技術的にも内陸に比べ低かった。◆新品種「大夢」の認知度はまだまだ東日本大震災前に現地適応性試験が始まっていた「岩手5号」を、2011年に「大夢」と命名。2013年に品種登録されたが、まだ生産量が少ないため消費者の認知度が低い。宮古地域の人々の復興への思いをのせて生産拡大が進む「大夢」東日本大震災のあった2011年、「復興に大きな夢をのせて」という思いを込め、そのリンゴは「大夢」と名付けられた。岩手県内で栽培されているリンゴ品種は晩生種に偏重した構成で、特に「ふじ」の占める割合が40%と非常に高かった。また、県北部の高標高地帯では熟期が遅れることによる品質の低下が問題となっていた。品質と栽培特性に優れた新品種の誕生は地域の生産者の念願だった。特徴は名前のもう一つの由来である大玉であること。やませが入る宮古地域の厳しい環境下でも大きく育つ。甘みと酸味のバランスが絶妙で、蜜も入りやすく、果肉はシャリシャリとした食感。ジューシーでみずみずしく、食べると口の中いっぱいに果汁があふれる。 2006年ごろから一戸の農家が積極的に自身の果樹園で栽培に取り組み始めた新系統「岩手5号」。数年がたって実が大きくなり、収穫が始まった頃、栽培技術を確立して地域でこのリンゴの生産と周知を広めていこうという機運が高まっていった。そんな時、東日本大震災が発生する。町の産業の中心である水産業や水産加工業は甚大な被害を受けたが、山間部の圃場は津波をかぶらず、営農を継続できた。一部の農家が出荷していた道の駅は被災したが、販路への影響は幸い大きくなかった。そんな中、地域のリンゴ農家の新たな希望となった新品種を復興の象徴にと、「大夢」と命名。宮古地域(宮古市、山田町、岩泉町、田野畑村)の特産品「宮古地域復興りんご」として打ち出し、リンゴ産地としてPRするために2014年、「宮古地域大夢栽培研究会」が発足する。「大夢」の栽培を先行していた数戸の農家に、周囲が協力する形で研究会が立ち上がり、現在は宮古地域のリンゴ農家8戸11人が会員として参加。岩手県宮古農業改良普及センターと新岩手農業協同組合宮古営農経済センターが研究会を補佐し、岩手県沿岸広域振興局農林部宮古農林振興センターなどが助言を行っている。思いを込めた「特別なリンゴ」として収量増と知名度向上を図る「大夢」の栽培技術向上のため、収穫時期が近くなると年に182背景と課題待望のリンゴ新品種を宮古地域復興のシンボルに岩手県宮古市復興に大きな夢をのせて復興に大きな夢をのせて宮古の大玉リンゴを広めたい宮古の大玉リンゴを広めたい宮古地域大夢栽培研究会2929

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