岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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株式会社ひょうたん島苫屋カブシキガイシャヒョウタンジマトマヤ 食料品製造業 岩手県上閉伊郡大槌町吉里吉里11-64-6 0193-44-3009 0193-44-3009 http://hyotanjima-tomaya.jp/ 2014年5月 1,500万円 8億3,700万円(2020年度)、7億6,800万円(2019年度)東京大学の「大槌イノベーション協創事業」で水産業分野のマネジャーを務めた新谷洋一氏が、2014年に設立。地域の水産物を生かした冷燻を特産品として開発し、製造販売。商品が購入者や第三者機関から評価を得ている。 新谷洋一氏[代表取締役] 4人◆産官学連携の復興プロジェクトさまざまな分野でイノベーションを起こし、津波で壊滅的な被害を受けた大槌町の復興につなげようと、東京大学による産官学連携のプロジェクト「大槌イノベーション協創事業」が立ち上がる。◆新たな特産品の必要性大槌には400年の歴史がある特産品「新巻き鮭」があったが、将来的に見て、持続的な町の発展には新たな特産品が必要と考えた。事業を構想するだけでなく、実際に商品を製造・販売するため現地で法人を立ち上げた。◆専門外の分野で地域の事業に商品開発には異分野の知識や技術の習得が必要。さらに重要なことは、大槌町における事業として発展させることであり、そのための協力者を得ることだった。地元大槌産の大粒カキを地元産のナラ材で燻製し、オイル漬けに「鮭の冷燻製」を店内に陳列する新谷氏太閤秀吉の時代までさかのぼる新巻き鮭発祥の地、大槌から、新たな特産品が全国にその名を広げようとしている。東日本大震災後、大槌町に大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターを持っていた東京大学は、大槌町と「震災復旧及び復興に向けた連携・協力に関する協定書」を締結。水産業の高付加価値化ビジネスモデルを創生し、根付かせるための活動母体として「東京大学産学コンソーシアム『さかな』」が設立される。2013年4月に「東京大学大槌イノベーション協創事業(大槌イノベ)」が発足し、「さかな」も合流した。新谷洋一氏は定年退職後、「さかな」に参加し、2013年11月には東京大学大学院農学生命科学研究科特任教授に就任。水産業分野のマネジャーとして、地元の水産資源を利用した新しい特産品の事業化に挑むことになった。「大槌イノベが終了後も、プロジェクトの成果に基づき、大槌にとって真に意味のある活動が継続、発展していけるための実質的な仕組みができていなければ意味がない」と考えた新谷氏は、地元の人々を巻き込んだ民間会社を設立することを決心。2014年5月に株式会社ひょうたん島苫屋を設立する。担い手となる人材を見いだし、事業の賛同者になってもらうための活動を始めた新谷氏。その一つが、新たな特産品を作るために自らが汗をかいて試作開発を繰り返すこと。もう一つは、地元の人々とできるだけフランクに、深く付き合うことだった。地元で建材業を営む経営者が所有するシェアハウスを拠点に、2年間、毎月2回大槌に滞在。毎晩大槌の将来像について語り合った。また、漁協女性部の主要メンバー10人程度から成るグループを「大槌おさかな研究会」と称して、地元の魚材の取り扱い方やレシピについて、築地料亭の80背景と課題大槌での新たな特産品作りに着手まず築いた地域の人々との関係性岩手県大■町地域の食文化と資源活用した特産品で地域の食文化と資源活用した特産品で地産「都」消の新たな成功事例を地産「都」消の新たな成功事例を株式会社ひょうたん島苫屋2828

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