岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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結婚を機に気仙沼に移住した女性が、子育て中の母親が働ける職場が少なく、賃金も安い状況を改善する必要性を感じて起業。当初のインディゴ染めから、収益の高いパステル染めに事業を転換するなど、さまざまな工夫をしています。漁師の高齢化と後継者不足が深刻になる中で、三陸沿岸の若い漁師たちが集まった団体。海産物の養殖・加工、オンラインショップやレストランの運営、イベントの実施、人材育成など、いわゆる6次産業化を実践しています。田村氏 詳細は➡70ページ詳細は➡62ページ金を保証する企業が、もっと現れると、社会も変わると思いますね。額田 賃金を上げるためには、付加価値を上げることが重要です。東北は人の流動性が高くありません。従業員は長く安定して自社のために働いてくれるわけですから、社員教育に力を入れることができるはず。それを付加価値の向上につなげ、賃金に還元していくことが求められます。弓削 日本は賃金が安いだけでなく、物価も安いのが問題です。海外から観光客が来るのも、日本のおもてなしや文化の魅力も当然ありますが、何を買っても食べても安いからという理由もあると思います。賃金も物価も安いのは、やはり日本が経済成長できていないためですから、せめてOECDの平均程度に経済のスケールアップを図ることを考えるべきです。田村 日本の賃金や価格に対する考え方が、世界とは相当ズレているということが、企業の間でも次第に分かってきたように思います。というのも、技術を持っている企業から、日本国内での取り引きは、価格の引き下げばかり要求されるので、海外の企業だけを相手にしたいという声を聞くようになったからです。大切で、それによって小さな資金での起業が可能になっていました。弓削 賃金が上がらないという問題を解決する方法の一つは、商品を高く買ってもらうことです。つまりブランド力が大切ということになります。その点で、南三陸ワイナリー株式会社のワインコンクールで受賞したワインや、東松島長寿味噌の農林水産大臣賞を受賞した濃口しょうゆのように、象徴的な商品があると、「企業のウリ」を言葉にしやすく、情報として発信することによって、ブランド化の土台を築くことができます。そして、販売に当たっては、ネットを活用できる環境が整いつつあるので、利用してほしいと思います。それこそ海外に売っていくこともできますから。額田 海外とのビジネスのつながりの強化のためにも、SNSもうまく活用しながらネットとリアルの融合に力を入れていくことは、今後の地域の重要な課題の一つといえそうです。田村 東日本大震災以降に培ってきた東北ファンとの関係を再構築する8株式会社インディゴ気仙沼宮城田村氏 一般社団法人フィッシャーマン・ジャパン宮城ここに注目!ここに注目!柳井 東北には、経営者イコール労働者という零細企業が多く、賃金を上げるのもままならないところがあります。ただ、持ち家が多かったり、魚や野菜などを贈ったり、贈られたりする関係があったりで、収入に表れない豊かさもあります。そうした豊かさに、若い人は直感的に気付いたようで、復興支援などで訪れた人が、人とのつながりなどに魅力を感じて移住するケースが、既にありました。額田 「収入に表れない豊かさ」との関連で申し上げると、小林社長(陽と人)も、新製品開発のためのスペースを地域企業に貸していただいたり、作業を手伝っていただいたりといった支援を受けていましたね。コミュニティの中で信頼関係を築くことが低賃金克服に向けて海外とブランド化を視野に

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