岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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岩手県大船渡市年に向けて「キャッセン」内、菓子店や雑貨店などが集まるエリアの小道書店、花屋、カフェなどのショップが並ぶ須崎川南側のエリア大船渡まちもり大学を発展させ、学びに興味・関心を持つ人たちに向けて、課題解決の場としてリカレント教育的に学びの機会を提供。感染症やエネルギー、産業など、いくつもの課題に対し、それを解決しようとする人々が常に居続ける状態を目指す。商業・業務エリアと居住エリアのバランスを考えながら、快適で持続可能なまちを整備。海洋資源の不安定さに影響を受ける基幹産業・水産業への懸念から、他の事業者と連携し、陸上畜養のプロジェクト化にも取り組んでいる。◆行政の出資比率を4分の1にまちづくりの資金を、不動産所有者などからエリアマネジメント分担金として徴収する仕組みを行政と共に構築。市の出資比率を4分の1に抑えることで、事業のスピードを高め、民間の視点を取り入れやすくした。◆「日本まちづくり大賞」受賞設立2年後の2017年に「日本まちづくり大賞」を受賞。エリアマネジメント事業は着手前だったが、行政と民間が地域性を勘案した新しい手法を用いて取り組もうとしていること自体と、その将来性が評価された。◆地域の将来を担う人材を育成東京大学からのインターンと地元NPO法人と共に「大船渡まちもり大学」を立ち上げるなど、地域の課題解決を図り新たなチャレンジに取り組む人材を育成している。観光の在り方を見直し新たな外貨獲得へ密を解消しながら誘客するために、観光の在り方を見直している。マスから少人数単位へ、ハイシーズン集中型から分散型へ、似通った地域資源での訴求から独自の体験提供へ。被災経験を活用したコンテンツや被災後に生まれたつながりを生かしたECを試験中。属人的にならない課題解決の場を商業も居住も持続可能なまちづくり今後の発展に向けては都市圏や海外からの外貨獲得が必要だと考えていたが、新型コロナウイルスにより一変した社会情勢に鑑み、誘客の在り方を見つめ直している。ハイシーズンを中心とするマス観光に依存せず、「被災地である大船渡ならではの体験、教訓を活用できないか」と臂氏は慎重に言葉を選びながら話す。津波が襲ってくる状況で取るべき行動、最適な避難方法、最低限持っておくべき物など、災害への対応を学ぶプログラムを用意。少人数で体験してもらって、そのまま買い物や飲食に移行できるような、大船渡をトータルで楽しむ観光の形を考えている。もう一つ、活路を見いだそうとしているのがeコマース。被災後に縁を築いた企業を対象に、エリアの事業者の商品をセットにして販売するサービスを試している。外貨獲得の手段となるほか、地元商圏一辺倒だった事業者に外への意識を持ってもらい、商品開発にもつなげてもらう狙い。設立から6年、商業施設「キャッセン」を含む商業集積街区一体が求心力の高い“商店街”となっていることは明白だが、臂氏が最大の成果と自負するのが、地域の課題を解決するための場、体制が築けていること。地元NPO法人と共に立ち上げた「大船渡まちもり大学」を起点に、次世代の担い手を育む取り組みが成果を挙げている。「地域の課題解決は一朝一夕には成し得ない。解決に取り組む人が増えることが、持続的な発展には欠かせません」と力を込める。新型コロナウイルスが収束した後も、絶えず社会情勢は変化し、そのたびに対応が求められるだろう。課題を解決する事業から、課題を解決する人を生み出す事業へ。キャッセン大船渡によるまちづくりは、着実に次の段階へ進んでいる。7726成果とポイント新規事業の開始多くを失った被災から得たものを生かし将来の担い手と共に課題解決に挑む人材育成2030

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