岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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株式会社キャッセン大船渡カブシキガイシャキャッセンオオフナト その他の事業サービス業 岩手県大船渡市大船渡町字野々田12-33 0192-22-7910 0192-22-7910 https://kyassen.co.jp/ 2015年 1億2,200万円(2020年度)、1億1,500万円(2019年度) 3,000万円 大船渡市の復興計画を基に2015年12月、企業、行政、金融機関、商工会議所の出資で設立されたまちづくり会社。津波復興拠点整備事業により整備されたエリアの高質化に資するマネジメントを推進。商店街区の一部を管理運営する。 田村滿氏[代表取締役] 4人◆新陳代謝の少ない地方商店街の構造被災以前の商店街には1階が店舗で2階が住居の事業者が多かった。ほかの事業者に貸し出すことが少なく、新陳代謝が生まれずシャッター街となった。◆商店街としてのにぎわい低下家族経営が多いこともあり、個々の商店が商売の傍ら商店街全体の魅力向上やPR、誘客に取り組む余力はなかった。廃業が増えると横の連携も取れなくなった。◆属人的にならないための体制作りかつての商店街にもにぎわい創出に取り組む商店主はいたが、その活動が属人的になり、引き継ぎ手がいないことで途絶えてしまうことがあった。課題解決に持続的に取り組むには人材育成の体制が不可欠。須崎川をはさむように広がる商業施設「キャッセン」と臂氏「きゃっせん!(いらっしゃい!)」。再建を遂げた商店街の店主らが、訪れる人を“ケセン語”と笑顔で迎え入れる。大船渡港の後背地で、水産業と商業の町として発達してきた大船渡市。港湾機能の整備とともに中心市街地の立て直しは、地域経済の再興における最重要事項の一つだった。国土交通省の津波復興拠点整備事業で基盤が整えられ、地元企業、金融機関、商工会議所、エリアマネジメントパートナー企業、市が出資し株式会社キャッセン大船渡を設立。行政と民間が協働し、商業集積街区の開発を進める。意思決定のスピードを上げ、自律的なガバナンスを確保するために行政の出資比率を4分の1に抑え、津波復興拠点エリアを形成するパートナー企業から受け取る分担金で運営する仕組みを構築。取締役大船渡駅周辺地区タウンマネジャーの臂ひじ徹氏は「自社の努力がより問われるようになるが、意思決定の柔軟さと民間の視点を取り入れられたのは大きな判断だった」と振り返る。補助金依存度が高くなりがちという、まちづくり会社の問題点に対して一つの解答を示してみせた。事業内容の一つが、商業集積街区の一部に2017年4月全面開業した商業施設「キャッセン」の運営。かつての大船渡商店街やその周辺で被災した店舗を中心に、新たな事業者もテナントリーシングして賃料を受け取り、維持管理のほか施設全体のにぎわいを創出して入居事業者のビジネスを支援する。現在、約25店舗が入居。かつて大船渡は、1階が店舗で2階が住居という形態が多く、廃業した場合、土地や建物の転用が進まずシャッター街にならざるを得なかったが、商業施設にテナントとして入居する新しい形の“商店街”として、店舗が閉店する場合に入れ替えを行えるようにし、シャッター街となるのを防いだのが大きな特徴だ。この商業施設を含む津波復興拠点エリアのマネジメントも事業の一つ。共にエリアを形成するパートナー企業から受け取る分担金を活用し、販売促進、イベント実施、人材育成を行う。パートナー企業は定期借地権の借地料が減免されるインセンティブはあるが、「それを除いても分担金以上のメリットを創出することにもこだわりたい」と臂氏は言う。76背景と課題行政の出資比率を抑えた仕組みを構築し民間主体の柔軟なまちづくりを可能に岩手県大船渡市持続的な発展に向けて持続的な発展に向けてまちづくりから、まちをつくる人づくりへまちづくりから、まちをつくる人づくりへ株式会社キャッセン大船渡2626

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