岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
73/114

年に向けて生産能力に合わせた販路拡大岩手県陸前高田市産業として根付かせ、お金と人を循環事業を回し大規模生産地域の形成へ木骨ハウスは優良な栽培環境で、導入コストを抑えながら地域資源活用が可能に自社の生産量を増やしつつ、担い手拠点として研修生を受け入れて人材育成中通年の安定供給が前提のため、十分な供給量がなければ取引先を増やすことはできない。まずは自社の生産量を拡大することが最優先。自社栽培の生産面積を増やしつつ、担い手拠点から独立して生産を行う農家も増やし、その供給量に応じて販路開拓を進めていく。三陸から東北、東日本、全国へと商圏を広げることで継続的に外貨を獲得。持続可能な産業として定着すれば人材が地域にとどまり、移住にもつながり、就農者が増えていくことで地域内経済の循環が生まれる。農家のフランチャイズ展開、販路開拓と同時に、生産性や収益性、新技術確立など事業のブラッシュアップを行い、輸入品が大半の夏秋季市場流通量の半分、2,000t前後を賄う大規模生産地域を岩手県沿岸に形成する。◆研究を基にした独自の栽培2020年9月に初収穫し、初年度は2t半を出荷。研究を基に確立した環境制御による四季成りイチゴの2年8季採りという独自の栽培方法のため、競合が生まれづらく、生産量を増やすことでシェアを拡大できる。◆地域の木材活用で森林再生に寄与栽培施設に木骨ハウスを採用し、導入コストを抑えるとともに地域資源を活用。生産拠点、生産面積が増えることで森林の再生につながる持続可能なモデルを構築。◆人材を育成し地域での独立を支援越喜来の施設を「担い手拠点」として整備し、研修生を受け入れ育成中。栽培技術や生産管理、施設管理のみならず、経営のノウハウも学ばせ独立を支援する。ただし、太田氏には自社だけでその需要に応えて売り上げを独占する考えは無い。特有の気候を利用したイチゴの周年栽培を、県沿岸の被災地全域に広げていくことを構想しているのだ。そのために欠かせないのが人材の育成。経済産業省の補助金を利用して前述の「担い手拠点」施設を整備し、研修生を1人迎えた。2022年の独立を目指して現在、栽培技術や生産管理、施設管理などを学んでいる。将来的な事業展開のイメージとして、リアスターファームは中核会社としてノウハウ伝達、人材育成を行い、販路を開拓し、集約して販売。育成した人材を次々と独立させ、フランチャイズ的に生産農家を増やしていきたい考えだ。生産以外のビジネスの部分を中核会社に任せることで、独立した生産者も栽培に集中できるというメリットがある。目標に掲げるのは自社の栽培面積5ha、売り上げ5億円。気仙地域全体で50ha、50億円。「夏秋季の全国流通量の半分を賄う大規模生産地域を形成したい」と太田氏。「国内のケーキにのっているイチゴはほぼ岩手の沿岸で作られているんです、となれば」と未来を描く。リアスターファームのイチゴのブランド名は「さんりく星ほし苺いちご」。鈴なりになる赤い果実のように、リアスターファームで育った人材が三陸いっぱいに広がり、被災地に希望の星座を描く。穫したイチゴは現在、製菓販売店と直接取引をしているが、供給が追い付いていないためそれ以上の販路開拓は控えている。テレビや新聞などでリアスターファームが紹介されるとメーカーや店から電話が相次いで鳴るが、「今は出せません」と断っている状況。やはりニーズがあることは確認できているので、あとは生産量を増やしていくのみ。陸前高田と越喜来の施設に加え、宮古市の夏イチゴ生産農家から施設を引き継ぎ、フル生産で27tの単年度目標を掲げる。7324成果とポイント新規事業の開始作業効率・生産性向上人材育成2030

元のページ  ../index.html#73

このブックを見る