岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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株式会社リアスターファームカブシキガイシャリアスターファーム 農業 太田祐樹氏[代表取締役] 岩手県陸前高田市米崎町字川崎220-1 0192-22-8456 https://www.riastarfarm.co.jp/ 2018年 620万円(2020年度)、315万円(2019年度) 1,300万円 2018年4月に個人事業で開業し、2019年2月法人化。沿岸部で木骨ハウスを使い四季成り品種の夏イチゴを通年で供給する事業を展開。生産を拡大するとともに担い手を育成し、被災地全域に広げるビジョンを有する。 0192-22-8451 13人◆研究成果を活用して事業化復興庁・農水省「先端プロ」で中山間地域施設園芸の研究を行った太田祐樹氏が、研究に使った施設と研究成果を生かしてイチゴ栽培の事業を立ち上げる。◆国産夏イチゴ安定供給へのニーズ主にケーキに使われる夏イチゴの国内生産量は3,000tほどで、同程度の量が米国から輸入されている。国産に比べ味や品質が劣り、価格の乱高下もあるため、洋菓子店などには国産品の安定供給に対する切実なニーズがあった。◆沿岸津波被災跡地の利活用問題三陸沿岸には東日本大震災の津波被災跡地が南北に広がり、自治体が産業用地としての利活用に頭を悩ませていた。一方で、三陸にはイチゴ栽培に適した気候条件があった。三陸沿岸部の気象条件は、イチゴの施設園芸を行うのに最適三陸、岩手県沿岸に広がる被災地が北から南まで、夏イチゴの国内需要を担う一大特産地に姿を変える。2012年に新潟大学大学院自然科学研究科で博士後期課程を修了し、農学博士を取得した太田祐樹氏。2014年、復興庁・農林水産省「食料生産地域再生のための先端技術展開事業(先端プロ)」で、岩手県農業研究センター技術部南部園芸研究室の任期付き研究員に採用される。中山間地域施設園芸の実証研究として、木もっ骨こつハウスの改良、ハウス環境制御技術の実証、イチゴとトマトの長期栽培に取り組んだ。4年の任期を終え、陸前高田市にあった研究所の木骨ハウスと研究成果を生かし、イチゴ栽培の事業化に着手。個人事業主として開業し、2019年2月に株式会社リアスターファームを設立する。大船渡市三陸町越お喜き来らいにある産業用地の利活用を探っていた市の職員がヒアリングに訪れたことがきっかけで同年、経済産業省の補助金を利用し、「担い手育成モデル事業」の拠点として越喜来にも施設を整備した。三陸にイチゴ産地のイメージを持っている人はいないだろう。しかし、夏はやませが入り、冬は日射量が多い三陸沿岸部は施設園芸に最適な地域。そこで四季成りの夏(夏秋)イチゴを年間通じて安定供給するのが同社の事業モデルだ。主にケーキの上にのせる、酸味があって形や色つやのきれいなイチゴで、「なつあかり」「夏の輝」などの品種がある。その夏イチゴの国内生産量は現在3,000tほどで、同程度の量が米国から輸入されている。国産に比べ味や品質が劣り、価格の乱高下もあるため、国産品の安定供給が切望されているという背景があった。以前はネックだった輸送の問題も三陸自動車道開通で解消された。太田氏は「下道でリアス海岸沿いの曲がりくねった道を移動して、複数拠点から出荷して関東に届けるとなると、輸送に時間もお金もかかって商売にならない。三陸道の開通は大きいです」と話す。担い手育成し岩手の沿岸全域へ経済効果とにぎわい広げる2020年9月に初収穫し、初年度は2t半を出荷した。収72背景と課題三陸の気候条件と被災跡地を利用し研究成果を基に事業立ち上げ岩手県陸前高田市先端技術と地域資源を活用した先端技術と地域資源を活用した持続的な事業で被災地の希望の星に持続的な事業で被災地の希望の星に株式会社リアスターファーム2424

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