岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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監修委員座談会東京の集積と福島県の工場群とを結び、最先端のものづくりの開発・試作プロセスを支援する企業として成長。広域ネットワークを生かしながら福島の復興に貢献し、介護現場などで人を支援するロボット開発にも挑戦中です。マシニング加工、フライス加工を軸に、高性能の工作機械を用いて、航空機分野などの高い精度を求められる分野の部品づくりに、一貫して挑んでいます。その高い技術力で、2020年には地域未来牽引企業に選定されています。額田氏 詳細は➡44ページ詳細は➡42ページれることにした決断力が目立った小野食品株式会社なども印象的でした。一方で問題は、社会の中でも人権や雇用、賃金です。特に賃金は、インディゴ気仙沼が問題視したように低く、このままでは、東北に限らず日本全体が、外国人労働者からも相手にされなくなる危険すらあります。今回の事例にも、人を大切にし、簡単に解雇しないことで伸びてきた企業がありました。こうした例から、雇用環境の整備や、生産効率の改善などに関するヒントを得ることが重要です。また、賃金を上げることも、再生可能エネルギーの利用を100%にすることも、1社の努力では難しいので、自治体や大学をはじめ、地域全体で取り組むことが必要でしょう。柳井 夢を語らないと人はついて来ませんから、起業家はバックキャスティングで、ハードルを高めに設定しがちです。一方で、農業生産法人株式会社やまもとファームみらい野では、10年後には社員全員が高級車に乗れるぐらいの会社にするという目標を立てています。そうした分かりやすさも重要です。このような賃7福島弓削氏 株式会社渡工テクノサイト福島ここに注目!ここに注目!柳井 かつらお胡蝶蘭合同会社は、温室でコチョウランを栽培することによって、風評を免れたのをはじめ、栽培ノウハウの蓄積や、マーケットのセグメントも行うなど、生産条件を整えた上での起業で非常に印象に残りました。また、栽培に当たって技術指導を仰いだり、他産地の視察を行ったりしています。そうした意識的に学習する姿勢も、起業が成功するためには必要だと思います。株式会社鈴木酒造店でも、大阪から福岡の門司までの酒蔵を視察しています。鈴木酒造店では、地元の人に背中を押されて、甘酒からリキュール、お菓子まで製造し、酒かすを使って土壌改良まで行っています。補助金に頼らない株式会社キャッセン大船渡、従業員を解雇しない株式会社サンエイ海苔、社員の意識改革から出直しを図った株式会社東松島長寿味噌、思い切ってネット通販に力を入株式会社菊池製作所柳井 次は、目標の置き方や産業集積、さらに国際化について、議論を深めたいと思います。田村 目標という点で着目したいのは、SDGsとESGです。SDGsはまさに持続可能な開発目標であり、ESGは経営の目標となっています。環境と社会、ガバナンスを持続可能なものにすることが、これからの目標といえるでしょう。環境については、かつての自動車の排気ガス規制とメーカーの対応のように、バックキャスティング的に高い目標を掲げ、それに向かって、企業が技術革新や経営努力を行うという構図で進んできました。今は海外の大手IT企業などが、調達する部品は再生可能エネルギー100%で製造したものにするという方針を打ち出しているので、新たな企業努力が始まると思います。起業を成功に導く多様な取り組みと工夫これからの東北や日本が取り組むべき課題と目標

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