岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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5年以内に5万本のワイン醸造宮城県南三陸町ワインをハブに地元食材のブランド化町の交流人口増加でにぎわいをショップでは、ワインとともに南三陸産のさまざまな味に出合うことができる展望テラスでは、志津川湾の眺望とともにワインを味わえる南三陸町は海と山の産品が豊富。ワインに合う料理の開発など、ワインをハブにして地元の食材ブランド化を町内生産者と一緒に進めたい。人口減少が続く町で、10年後にも生き残る事業にしたい。2020年に最新設備を備えるワイナリーが完成した。5年以内に5万本醸造を目標とし、そのうち半分は自社栽培のブドウを原料にしたいと考えている。ワインを絡めたイベントを企画し、交流人口の増大を図ることで、町内の宿泊者も増やしたい。町のにぎわいを取り戻したい。◆ブドウ栽培と醸造本数を拡大100本のワイン用ブドウ苗木からスタートし、現在は町内に3,650本、7品種を育てる。山形県上山市でも1.7haで栽培する。2020年は購入したブドウも使用して2万本を醸造し、2021年は3万本を予定する。◆ワインを絡めたイベントで集客ブドウ畑でのワイン会で地元の食材とワインを楽しんだり、志津川湾クルーズで漁の現場を見たりなど、ワインを通して人を呼び込むイベントを企画し、交流人口の増加に貢献。海中熟成ワインも好評を集める。◆展望テラスは町の新名所ワイナリーは海に面した水産加工場を改修。海の見える展望テラスが2020年10月に完成した。町の新たな名所となっている。◆他業種を巻き込む海中熟成ワインではカキ漁師の協力を得、志津川湾クルーズでは地元の鉄工所が改修した漁船を利用。町内の他業種を巻き込みながら展開している。醸造所やショップ、展望テラスなども備える。被災後に建てられて空きが出たプレハブの水産加工場を、多くのボランティアの手伝いを得て改修した。展望テラスは、クラウドファンディングで全国から支援を得た。ショップでは、ワイン販売のほか、コミュニケーションスペースを設け、地元産品を活用した食事の提供も行う。ワインの海中熟成にも挑戦。志津川湾はカキの養殖が盛んで、2020年はカキ棚に300本のワインを半年間つるした。海中は温度変化が少なく、海中の音の振動により、ワインがまろやかに熟成するといわれている。2021年も500本以上を沈める予定で、「南三陸特産のカキとワインで一つのストーリーができないだろうか」と佐々木氏は考えている。南三陸ワイナリーでは白ワイン・スパークリングワインが主力だが、赤やロゼも造っている。リアス式海岸を持つ南三陸は、海産物のほか農産物や畜産物も豊富だ。南三陸の海山の産品で作るコース料理にワインを合わせることで、文字通り町全体を巻き込む食の文化に貢献できる。2021年7月に始まった「志津川湾R&Bクルーズ」では、漁場を間近で見物し、地元の旬の魚介とワインを堪能する。地元の鉄工所がリニューアルした漁船を活用することで、さまざまな業種が関係し、その影響を町全体に広げる狙いがある。「何かを達成することを目指してはいません。この事業を継続していくことが一番重要。海産物だけではなく、南三陸には『わかめ羊』といった畜産やたくさんの野菜もあります。農水産業の生産者のみんなと一緒に、それらの食材をつなぐ役割をワインで担えれば」と佐々木氏。ワインが触媒となってほかの産品に目が向けば、町の活性化にもつながる。宿泊客が増えれば、雇用も増えるだろう。ワインだけを売るためではなく、町の復興を第一に取り組んでいる。6922成果とポイント年に向けて新商品の開発新規事業の開始新規のブランド立ち上げ人材育成2030

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