岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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現在、ブドウ畑は南三陸町内の2カ所、計2.2haで約3,650本、7品種を育て、山形県上山市の1.7haでも栽培している。購入したブドウで醸造したワインも含め、2021年は3万本の醸造を目指し、南三陸町の自社ショップとネット通販、町内の商店街や酒販店で販売。町外・県外の酒販店や飲食店への卸も行う。「5年以内に5万本出荷し、半分は自社のブドウで醸造したい」と佐々木氏は目標を掲げる。海中熟成ワインや志津川湾クルーズを展開ワインを活用して町に人を呼び込む志津川湾に面したワイナリー施設は2020年10月に完成。南三陸ワイナリー株式会社ミナミサンリクワイナリーカブシキガイシャ 飲料・たばこ・飼料製造業 佐々木道彦氏[代表取締役] 宮城県本吉郡南三陸町志津川字旭ケ浦7-3 0226-48-5519 0226-48-5536 https://www.msr-wine.com 2019年 100万円 4人 2,400万円(2020年度)、700万円(2019年度)南三陸町で初めてのワイナリーを設立。地域おこし協力隊の2人でスタートし、2019年2月に法人化。2020年10月にショップとキッチン、展望テラスを設けたワイナリーをオープン。◆津波で町の中心部は壊滅的被害東日本大震災によって南三陸町は大きな被害を受け、町の人口は被災前の約1万8,000人から約1万2,000人と33%近く減少した。津波によって多くの職場が失われ、新たな産業が必要だった。シードル用に秋保ワイナリーにリンゴを出荷していた縁で、ワイン用ブドウ苗木100本の寄贈を受ける。◆ブドウ栽培から始め町内初の醸造所にこれまで町内でワイン用ブドウの栽培は行われておらず、本当にワインができるのか疑問視されている中でのスタートだった。2017年に植えられたブドウを2019年に初収穫したが、半分以上が獣害に遭った。和食と相性の良い甲州シュール・リー(左)、煮込み料理や肉料理に合うメルロ(右)68背景と課題宮城県南三陸町復興ボランティアがきっかけ5年以内にワイン5万本醸造を目指す東日本大震災で大打撃を受けた南三陸町で、ワイン醸造が行われている。それまでワインに縁の無い土地だったが、シードル用リンゴの出荷先である仙台市の秋保ワイナリーから2016年春に100本のワイン用ブドウ苗木が寄贈されたのを契機に、町の新しい特産として期待されることになった。本格的にワインの醸造が始まったのは、静岡県の会社員だった佐々木道彦氏が、南三陸町地域おこし協力隊員として赴任してきてから。佐々木氏は東日本大震災直後からボランティアとして何度も三陸沿岸を訪れ、「何か新しい事業を起こさなければ沿岸部の再生は厳しいのではないか」と感じていた。2014年から仙台市の企業に勤める中でワインの魅力に取りつかれ、ワイン造りに挑戦したいという思いが生まれた。そうした折、町の主導で2017年に南三陸ワインプロジェクトが立ち上がった。「ワイン造りを南三陸の新しい事業として立ち上げ、町の復興を支えたい」という思いから2019年1月、南三陸町地域おこし協力隊員に就任。2月には法人化し、南三陸ワイナリー株式会社を設立。代表取締役に就任し、栽培・醸造担当の正司勇太さんと二人三脚でスタートした。町民にとってワインはなじみが無く、本当にワイナリーが成立するのか疑問視する向きもあった。2017年に植えられたブドウを2019年に初収穫したが、半分以上が獣害に遭い、醸造できたワインは数十本のみ。翌2020年は361kg収穫し、276本を醸造した。新規事業立ち上げで、町ににぎわいを新規事業立ち上げで、町ににぎわいをワインで地域の食産業をつなぐワインで地域の食産業をつなぐ南三陸ワイナリー株式会社2222

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