岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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宮城県女川町◆2020年、スーパー新店舗を開店被災から9年の時を経て、ついに、前店舗の程近くに新しい「女川スーパーおんまえや」を開店。さまざまな買い物需要に応えつつ、町民のコミュニケーションの場としても活用されている。御前屋をPRする取り組みに注力人材の確保・育成に尽力「究極の御用聞き」を目指す帆前掛けに並ぶ文字が、品ぞろえの充実に取り組んできた歴史を物語る。店内には鮮魚をはじめ、町民の生活に欠かせない商品がそろっている。大量のホヤやカニが並ぶのは、海産物の豊かな土地ならでは現在はコースターなど、佐藤氏をモデルとしたイラストを載せたオリジナル商品の開発が進行している。カジキなどの冷凍商品を扱うECサイトの構築にも取り組み中。これらは全国から顧客を獲得するツールであるとともに、御前屋の認知度を上げる役割も担う。事業の多角化は御前屋の伝統でもあり、今後も進展していく。そのため、採用活動を積極的に行い、人材の確保・獲得に努める。それは雇用の場づくりと表裏一体で、御前屋で働く人を増やすことで女川町の活性化にもつなげていく。御前屋が大事にするポリシーは「たった1人の要望であっても全力で応える」こと。これまで何よりも顧客ニーズを満たすことに全力を投じてきた御前屋は、これからも御用聞きの究極形を追求していく。◆いち早く再建を決断被災によって人的にも物的にも大きな被害を受けたが、地域の人たちのためにできることをしようと、創業の精神にのっとり、いち早く自社再建に取り組んだ。◆多角化経営が被災後に真価発揮被災後は一時、宿泊業が事業の柱になった。2012年には清和荘、なごみ荘と相次いで宿泊施設をオープンさせている。船舶仕込み事業も拡大した。らスタートしているので、お客さんのためになることを何より最優先してきたという歴史があります」と背景を解説する。「いわば御前屋のDNAですね」とも。また、判断基準が明快なので決断も実にスピーディー。「お客さんを待たせてはいけませんので」と阿部氏は語る。「おんまえや」は町内唯一のスーパーマーケットで、2013年8月に仮設店舗、2015年12月にJR女川駅前に建設された商業施設「シーパルピア女川」に「ミニスーパーおんまーと」を新設した。そして、女川町の復興計画に合わせる形で2020年3月12日、かつての店舗があった場所の程近くに「女川スーパーおんまえや」新店舗オープンへと至っている。新型コロナウイルス感染症が日本でも流行し始めたころだったが、オープン初日には400人ほどが開店前に列を成した。店舗は明るく、天井も高い。棚間隔を空け、通路が広いので圧迫感が無い。名物はみそおにぎり。「地域の人々に長年愛されており、お昼時で売り切れることが多いです」と阿部氏。鮮魚はもとより、総菜コーナーも充実。日用品含め、品ぞろえは町民向けに練りに練られている。東日本大震災後の経営状況は順調だ。とある縁があり、静岡県焼津港を拠点にする漁船から依頼を受けるなど、船舶仕込み事業が拡大。そのほか、介護事業にも新規参入を果たしている。多角化は御前屋の伝統であり、さらなる発展に向け今後も進められていくが、それに伴い当然、人材確保・育成にも注力する。女川町を活性化するべく、雇用の場をつくるという意味合いも強い。御前屋の在りたい姿は、「お客さんに何か困り事があったら、『取りあえず御前屋に頼んでみよう』と思ってもらえるようになること」(阿部氏)だ。御用聞きの究極形を目指す。672成果とポイント年に向けて新規事業の開始作業効率・生産性向上人材育成2030

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