岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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宮城県石巻市生活者を育てる石巻市外へも広げる石巻市内にある築約60年の木造平屋をリノベーションしたアトリエハウス倉庫2階に広がる、会員制コミュニティ「Third Self」専用のコワーキングスペース社会の在り方や支配的な価値観が変わっても、自らの幸福を自らの力で追求できる、誰もが打つことのできない「出る杭」をつくる。生産→消費の一方通行的なリニア経済を脱し、「消費者」をつくらず自ら心地よい生活を思考し創造する「生活者」を育てる。これまで石巻市内をメインに住宅事業を展開してきたが、これからは仙台など他地域にも広げたい。◆クリエイターら幅広い入居者これまで約100人が入居。フリーランスのクリエイターなど県外からの入居者が多い。基本は1年契約。平均2年程度入居。2020年に民泊事業も始めた。◆大学生インターンをコーディネートインターン受け入れのコーディネートを行う東北クリエイティブアカデミー(復興庁 復興・創生インターンシップ事業)は、石巻などの企業24社53プロジェクトに129人の大学生インターンをコーディネートした(2020年2月現在)。◆女性が活躍できる企業正社員6人、パート・業務委託3人のスタッフ9人のうち、女性が8人。地方都市では女性が選べる働き先が限られている中で、活躍できる場を提供。出社はフレキシブルにして、負担にならないよう配慮する。が、地元の男性と結婚して根を張りました。また、大家さんにはご高齢の女性も多かったので、不動産屋然としたスーツの男性が来るよりも、Tシャツを着た“ゆるい”若者が来た方が、気安く話しができたみたいです。相続絡みなどでは、大家さんの家族事情などプライベートな話題に触れることもありますが、よそ者の方が話しやすいこともあるようです。私たちのような若者は当時の石巻の不動産業界では異質でした」と振り返る。当初は住宅地図を見ながら空き家物件をしらみつぶしに探した。「世の中が良くなることに使えるなら協力しようという、大家さんの善意が地域経済につながっていくことが重要。ビジネスは社会的事業なので、しっかり収益化して持続させたい」と現在の心境を語る。石巻市の賃貸アパートは被災後5年間で急増し、供給過剰で家賃が大幅に下落。地価も下落傾向で資産価値が下がり、人口減少に伴い空き家も増加。そうした中、一件一件の収益率が低いこともあり、巻組は5年以内に扱い物件を100件増やす計画だ。巻組が扱う物件は、即日入居・家賃審査無しで地域コミュニティーと良好な関係にあるシェアハウスが主流。入居者はクリエイターや外国人が多かったが、渡邊氏はさらに幅広い入居者を開拓する必要性を感じている。1Kアパートではなく、シェアハウスに価値を見いだす人たちへの訴求が必要だ。仙台市や他地域での展開も視野に入れている。人材育成では都市部のクリエイターの卵を石巻に集め、地域資源を活用して彼らの生活を支えながら、作品制作や事業づくりに取り組める環境を提供。約400㎡の倉庫を改修した「Creative Hub」は、1階がアトリエ、2階はコワーキングスペースとして2021年に完成。大学生インターンを石巻の企業へ受け入れるコーディネート事業も展開。ハードとソフトの両面から支援し、地域のにぎわいをつくり出そうとしている。618成果とポイント年に向けて新商品の開発新規事業の開始グローバルな取り組み人材育成2030出る杭をつくる

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