岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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株式会社巻組カブシキガイシャマキグミ 不動産賃貸業・管理業 渡邊享子氏[代表取締役] 宮城県石巻市中央2-3-14 観慶丸ビル2階 0225-24-6919 0225-24-6919 https://makigumi.org 2014年 510万円 6人(正社員) 約5,770万円(2020年度)、約4,002万円(2019年度)石巻市で空き家を改修して賃貸やシェアハウス、民泊施設として貸し出す。東日本大震災を機に長期滞在するボランティアやクリエイター向けの住宅不足改善を目指し業務を開始。コワーキングスペースも作り、クリエイターの育成も。◆ボランティア向け住宅が足りない東日本大震災の津波被害で、石巻市は住宅不足になった。全国から多くのボランティアが駆け付けたが、長期滞在するための賃貸物件が不足。全国から来るやる気のある若者が定着できなかった。◆賃貸住宅の供給過剰で家賃相場下落昨今は復興公営住宅などの整備が進み、住宅供給が増えたことにより、家賃相場が下がっている。空き家処分を望む大家は増えているが、接道義務などを満たさない悪条件の空き家が増加している。「このビジネスをしっかり収益化して持続させたい」と語る渡邊氏2011年の東日本大震災で、石巻市は津波によって大きな被害を受けた。大勢の人たちが住居を失い、仮設住宅や借り上げ賃貸住宅などに被災者は転居を余儀なくされた。被災後、被災地に多くのボランティアが訪れた。石巻には発災からの1年間で延べ約28万人。日帰りで来る人や、公的に整備された大学構内のテントに泊まる人もいたが、長期滞在用の施設は圧倒的に不足。そうした状況下、東京都で大学院に在学していた渡邊享子氏はボランティアとして石巻に通うように。元々東北に縁はなかったが、被災地を目の当たりにし、何かできないかとの思いからだった。博士課程に進学後も研究費を活用してボランティア活動を継続。2012年に民間まちづくり支援団体の一般社団法人「ISHINOMAKI 2.0」に参画し、2013年に理事就任。「やる気のある若者が集まってきたが、住むところが無くて帰っていくのはとてももったいないと思った」と渡邊氏は語る。「空き家を修繕すれば住めるのでは」と考え、数人の若い建築家と共に改修に取り組んだ。1軒目は8畳2間の平屋の一軒家で、2013年に貸し出し。3軒を改修して、何とか家賃で収益を上げられる見込みができた。2015年に合同会社巻組を発足。石巻市内の古い住宅地は、敷地が道路に面していないなど条件の悪い空き家が多数あり、これを買い取ってシェアハウスなどとして貸し出した。大家は高齢者が多く、廃屋に近い物件を処分できずに手に余っているケースもあった。それらを有効活用できれば、大家、貸借人の双方にとって有益な事業となる。また、石巻は東日本大震災で郊外に街が拡散し、古くからの市街地は過疎化しつつあり、街ににぎわいを取り戻す一助にもなると考えた。女性でよそ者の立場生かす社会的事業として収益化し持続女性でありよそ者でもあることは、地縁血縁が色濃く残る地方都市で特に不動産業で活動するには苦労もあったが、10年間を振り返るとメリットが大きかったという。「最初はすぐにいなくなってしまう人と思われていた部分もありました60背景と課題空き家を活用しシェアハウスへ大家さんにも有益な事業に宮城県石巻市被災地への移住を希望する若者を被災地への移住を希望する若者を住宅開拓で支援する住宅開拓で支援する株式会社巻組88

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