岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
59/114

年に向けて人材育成を通して営業力強化宮城県山元町データの活用で最適生産を目指す社員全員が高級車に乗れるように山元町の沿岸農地復活のために立ち上げられた大規模営農の生産拠点だ一大人気商品となっている地元・山元町産の干し芋社員に問題・課題としっかり向き合うマインドを持ってもらうよう、ミーティングに大きな力を割いている。ちょっとした気付きが大きな成果を生むことを体験してもらい、物事の変化を見逃さない観察眼を養う。しっかりと自身のアイデアを他人に説明できるよう、社員一人一人が高いプレゼンテーション能力を身に付ける。気象はじめ、さまざまな条件下での結果を積み上げたデータを蓄積している。見える化にデータを役立て、いつ何をすればいいかを導き出す。データ分析のメソッドの洗練も常に図り、最適生産を目指す。営業力の強化、販路拡大に加え、最先端の生産システムの導入など効率性を突き詰めることで、社員への還元も最大化する。「もうかる農業」としてやまもとファームみらい野モデルを確立し、社員全員が「レクサス」などの高級車に乗れるようになるのが10年後の目標。◆生産物の選択が奏功露地栽培では長ネギ(25ha)、タマネギ(19ha)、サツマイモ(17ha)が主力。干し芋は一大人気商品となった。トマト、イチゴはハウス栽培を行う。イチゴは現在、隣町の亘理町で生産している。◆高効率営農体制の整備を推進ほ場情報と電子地図を関連付ける営農管理システム「Z-GIG」を導入。農業生産工程管理「GAP」の認証も受けるなど、高効率化・スマート化への取り組みを積極的に進め、データの活用を図る。◆地域を挙げて農業を再建地域農業者の生活再建に向け、「住民参加型」の生産を目指すことを基本構想の一つに打ち出しており、地域の元農家の人たちに雇用の場を提供している。して、オランダ式高度環境制御ハウスを設置し、同年5月にはトマトの初出荷式も執り行った。トマトは3月下旬から1月上旬まで出荷を行う。ヒートポンプを活用した夜間冷房が安定した成長に一役買い、循環養液を殺菌、再利用するなどしてコスト削減にも努めている。当初、年間出荷量の目標を300tと定めたが、現状すでにこの水準をクリアしている。2018年2月には干し芋加工施設が完成。現在、干し芋は同社の一大人気商品だ。「気候的に糖度が上がりやすいようです」。加工施設はみやぎの企業的園芸等整備モデル事業を活用して整備。紅はるかを使った「なめらかはるか」、シルクスイートを使った「しっとりシルク」は山元ブランド認証商品にもなっている。サツマイモは2021年2月に東北経済連合会の紹介で九州農水産物直販株式会社を通じ、紅はるか2.5t、シルクスイート0.5tを香港に輸出し、販路拡大も見据える。スマート化や最新の生産工程への取り組みも積極的で、JA全農のGPS(全地球測位システム)を利用し、ほ場情報と電子地図を関連付ける営農管理システム「Z-GIS」を導入。農業生産工程管理「GAP」の認証も受けている。馬場氏は「地域の創造的復興のために、被災農家の皆さんの雇用機会確保が欠かせません」と強調する。「季節での変動はありますが、パート従業員は最大で120人程度になり、このうち約6割が地権者の方々です。家族や親子で携わるケースもあります」。換地処分が終わった段階で、やまもとファームみらい野が現在農地として借り受けている120haの地代も支払われていくことになるという。馬場氏はこのやまもとファームみらい野を「利益率の高い農業」の一つのモデルにしたいと考えている。「10年後には社員全員が高級車に乗れるぐらいの会社が目標なんです」。ほほ笑みながら、本気でそう語った。597成果とポイント新商品の開発作業効率・生産性向上事業内容の発信・PR2030

元のページ  ../index.html#59

このブックを見る