岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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◆JAグループに町が組織づくりを要請山元町はJAみやぎ亘理に組織づくりを相談。山元町東部地区の地権者約50人の代表5人も出資し、JAグループが中心となって法人設立に尽力。常務取締役の馬場仁氏は、2013年12月に現地視察を行った際のことをこう振り返る。「沼のようでした。被災から手が入っていない所も多く、土壌を改良して農地として使えるのか不安でした」。それでも、山元町と宮城県の支援は大きく、2014年9月には地権者組合主催の山元東部地区地権者説明会で、山元町が被災地域農業復興総合支援事業で導入した施設や大型機械を活用して大規模営農を行う旨のプレゼンテーションを行い、審査を通過。プロジェクトがスタートした。やまもとファームみらい野の農地は、4つの集落跡地を整備した約120ha。「もとは宅地が5割で、田畑や沼が残り5割」という土地で、取り組みは試練の連続だった。まず作付けする品種をどれにするかに頭を悩ませた。理由は地下水脈が地面に近く、砂地だったためだ。「保水力が弱い土壌は養分が抜けやすい」という。試行錯誤の結果、長ネギ、タマネギ、サツマイモ、ニンジン、ゴボウなどを選んだ。「トライ・アンド・エラーを繰り返し、ようやく第5期となった2020年に取り組み方がある程度確立された感覚があります」。干し芋が一大人気商品に香港への輸出など販路も拡大2017年3月には基盤整備事業が完了。復興交付金を活用農業生産法人 株式会社やまもとファームみらい野ノウギョウセイサンホウジンカブシキガイシャヤマモトファームミライノ 農業 島田孝雄氏[代表取締役] 宮城県亘理郡山元町高瀬字北中須賀3 0223-23-1218 0223-23-1219 https://yamamoto-farm-miraino.com/ 2015年 3億1,900万円(2020年度)、2億9,600万円(2019年度) 5,000万円 2015年7月設立。東日本大震災で津波被害を受けた山元東部地区での農作物生産を再開。住民参加型の営農を指向する。長ネギ、タマネギ、サツマイモなどを生産するほか、イチゴ、トマトの施設栽培を行う。 16人(役員含む)◆山元町沿岸部が津波により壊滅的被害津波により、水田と畑で約2,400haあった農地のうち、約1,300haが被害に遭った。山元町は農業復活を進めるべく、大規模営農にかじを切った。◆会社設立後、数年は土壌改善に苦心当初、作付け予定地だった120haは沼地のようになってしまった耕作放棄地や宅地跡だったため、土壌改善に力を尽くした。オランダ式高度環境制御ハウスで栽培されるトマトと馬場氏58背景と課題宮城県山元町壊滅的被害を受けた山元町の沿岸農地営農再開に向けJAグループが立ち上がった東日本大震災で、宮城県南部に位置する山元町沿岸地域の農家は約9割が被災した。津波で塩水と泥をかぶった農地をどう利用していくかは、山元町にとって大きな課題となった。全体の復興計画の中で沿岸部の活用として打ち出したのは、農地の再興だ。町はまず、JAみやぎ亘理に山元町東部地区の農地の再編・整備を要請。これに呼応し、JAみやぎ亘理は全国農業共同組合連合会、農林中央金庫などに掛け合い、JAグループで対応。結果、JAグループのほか、山元町東部地区の地権者組合に参加する約50人のうち設立当初の5人も含め、複数の団体・個人が出資する形で2015年7月、農業生産法人株式会社やまもとファームみらい野は設立された。出資した5人のうち4人の地権者は設立当初より役員に名を連ねている。津波被災地で住民参加型の営農を推進津波被災地で住民参加型の営農を推進勘に頼らない新しい農業の確立を目指す勘に頼らない新しい農業の確立を目指す農業生産法人 株式会社やまもとファームみらい野77

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