岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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正統的な生酛造りを代表する名酒であり、大七酒造の看板商品。豊かなコクとうまみ、酸味が完全に解け合い、後味のキレも良い。杜氏の佐藤孝信氏は、生酛造りの第一人者として「現代の名工」、黄綬褒章の栄誉を受けている。大七酒造三陸とれたて市場福島県二本松市岩手県大船渡市 福島県二本松市竹田1-66 0243-23-0007 https://www.daishichi.com/ 岩手県大船渡市三陸町越喜来字杉下75-8 0192-44-3486 https://www.sanrikutoretate.com/大七酒造株式会社有限会社三陸とれたて市場唎酒師が選ぶ「地酒大show」で最高位プラチナ賞を3回受賞し、殿堂入り。720ml 1,390円人気の理由CAS凍結された新鮮な刺身を、袋のまま流水で解凍し盛りつけるだけという手軽さが人気の秘密。お刺身おまかせ便5種入り1,750円人気の理由 「大七純米生酛」が発売されたのは1983年。今では後発の造り手たちが目指す座標軸となり、唎きき酒ざけ師しのためのテキストやソムリエコンクールなどに採用され、全国的に生酛造り再評価の機運をもたらしている。 世界市場を見据えた生酛造りによる高級酒は、国内外で高い評価を受けたが、2011年の大地震の直後、国内以上に風評の影響が懸念されたのは海外市場だった。福島第一原発の事故がすぐに収束しなかった場合の対応を考え、すべての建物で空調と換気扇を停止。窓や換気口に目張りを施して気密性を保った。また、一貫して製造工程の各段階で全製品の安全検査を実施。公的研究機関によるゲルマニウム半導体検出器を用いた厳密な測定を行い、放射性物質不検出の証明書を提示するなど、万全の対策を講じた。そして、こうした対策の記録を写真に残し、対外的な発表に備えた。 真摯な対応と積み重ねてきた信頼で、その後の売り上げも堅調な伸びを見せた。現在は欧米やアジアの20を超える国々に輸出し、欧州の王室晩餐会や各国の最高級レストランなど、世界で高い評価を獲得している。 被災を機に、それまで取り組んできた鮮魚・活魚の産地直送モデルはお客さまの役に立てていたのか?と考えた。結果、鮮魚を冷蔵で販売する従来のビジネスモデルを、凍結商材一本で攻める業態に転換した。 「お客さまにストレス無く、もっと便利に、高品質な三陸の幸を召し上がっていただきたい」との思いから、高品質を担保できる最新の凍結技術CASによる個食使い切りサイズの凍結刺身を開発。利便性の高い商品「盛るだけお造り 天然旬凍」が生まれた。 3日程度だった製品寿命が抜本的に改善され、食品ロスを極限まで低下。漁獲される資源をあまねく活用できるようになった。同時に販売チャネルの分散を強化。飲食店や首都圏の小売流通販路を拡大し、複数のミシュラン店舗への供給や、香港などへの輸出製品として定着も進んだ。BtoBとともにBtoCにも注力し、自社サイトをリニューアル。SNSで情報を発信し、ECサイトでの販売を強化。特にコロナ禍では一般消費者への営業にリソースを集中し、感染拡大の影響にもかかわらず2020年比150%以上の売上増となった。54既存のグローバルなブランド化取り組み事業内容の発信・PR既存のブランド化最新の凍結技術であるCAS凍結を導入し、新しい凍結刺身商品の開発に成功。また、消費者のニーズに合わせた商品の形態や高品質を担保する処理加工法を開発したことにより、さばきたてのような刺身を簡単に楽しむことができる。作業効率・生産性向上事業内容の発信・PR被災時の対応が世界中から高評価。迅速な危機管理体制で風評を一蹴大七純米生酛被災後、時代に合った商品と販売戦略へ盛るだけお造り 天然旬凍変更し、コロナ禍で150%売上増

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