岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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人気商品の開発秘話職人技とITを融合した最先端施設園芸により、高品質なイチゴの安定供給を実現した。品種だけでなく、技術や製法、品質基準による果実の違いをブランド化し、産地から流通まで一貫したブランド管理を行っていることが特徴。GRA「希望のかけ箸」の材料には、東日本大震災で被害の大きかった福島県・宮城県・岩手県の杉間伐材を使用。割り箸が復興への架け橋となり、自然豊かな東北の地が再び人々の希望を実らせる場所になるようにと願いが込められている。磐城高箸宮城県山元町福島県いわき市 宮城県亘理郡山元町山寺字桜堤47 0223-37-9634 http://www.gra-inc.jp/ 福島県いわき市田人町南大平字坪内95-1 0246-65-0848 https://iwaki-takahashi.biz/株式会社磐城高箸「食べる宝石」がコンセプト。複数品種のイチゴの統一ブランド。2013年度グッドデザイン賞受賞。レギュラー2パック入り1,700円より人気の理由スタイリッシュな割り箸はさまざまな賞を受賞。割り箸の売り上げの一部が義援金となり寄付される。3膳セット550円人気の理由 津波でイチゴ栽培農家の95%が壊滅的ダメージを受けた山元町。イチゴ栽培に構造変革を起こし、新たな事業として雇用を創出し復興につなげたいという思いから生まれた商品が「ミガキイチゴ」だ。 生産管理にITを活用し、最適な温度や湿度、日照時間、CO2濃度など匠の技をデータ化することで、高品質のイチゴの安定供給を実現。法人に賛同するどの農家で作っても品質にバラつきが無いよう厳格な品質管理を行い、農業技術や栽培データを共有することで、山元町で生産されるイチゴ全体の品質向上に成功。データを活用し、農業未経験者でも短期間に就農できるよう新規就農支援事業を展開した。 こうして、品種だけでなく技術・製法・品質基準によるブランドイチゴ「ミガキイチゴ」が誕生。栽培管理をITによる環境制御へ変え、農業コストの構造変革をもたらし、「もうかる産業」へと変化させた。また、イチゴの販売だけでなく、イチゴを原料としたスパークリングワインやコスメなどの商品を開発。6次産業化を進め、さらなる「もうかる産業」化を展開している。 「創業当時は“たかが割り箸” とよく言われました」と話すのは、代表の髙橋正行氏。2010年に「株式会社 磐城高箸」を設立。5カ月間の試験製造を終えて操業2週間後に被災。余震で機械が壊れ、福島第一原発事故の影響で当時の取引先との契約はすべて解除。廃業を考えていた際に復興支援団体の協力があり、被災3県の杉間伐材を使用した「希望のかけ箸」を発売した。 福島の磐城杉、宮城の栗駒杉、岩手の気仙杉の間伐材を使い、3県の被災地への思いを込めた。売り上げの一部が義援金になり、購入客も被災地へ思いを馳せることができる。シェアわずか数%の国産割り箸であること、工程の一部を障害者施設に委託していること、乾燥工程に石油系燃料を使用しないこと。消費者が共感できる商品コンセプトも、ヒットの要因だろう。 「どうしたらお客さんに手に取ってもらえるか」と、SNSなどのフィードバックを大切に、アイデアや商品開発に生かす。マーケットイン視点と付加価値を生む一貫生産販売で、割り箸以外にも枕や鉛筆など、地域の間伐材を使ったヒット商品を放ち続けている。53既存の作業効率・生産性向上ブランド化人材育成新規のブランド立ち上げ事業内容の発信・PR農業生産法人 株式会社GRA技術とITの融合でイチゴをブランド化。農業コストを構造変革ミガキイチゴ被災地の杉間伐材を使用し、付加価値を持たせることにこだわった割り箸希望のかけ箸

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