岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県国見町展開するとともに、オンラインでの販売も行っている。「通常のビジネスなら、まず事業計画を立て、資金を調達して臨むというのがセオリーですが、地域での事業は、事業計画の前に、信頼関係を築くというプロセスが必要だと思います。カキの皮を活用した商品の開発は、自己資金を投入して行いましたが、周囲の人や会社と信頼関係があったために、開発のためのスペースを貸してもらったり、作業を手伝ってもらったりと、さまざまな支援を受けることができ、初期投資は思ったほど必要としませんでした」。地域の課題を正しく定義することから持続可能な取り組みが生まれる小林氏は、これからの地域での事業は、経済合理性のみを追うのではなく、社会性と経済性のバランスをとることと、みんなでもうけるという視点が必要と語る。「農業においても、農家が主役という点はこれからも変わりません。しかし、消費者や社会の動向やニーズをキャッチしたり、逆に情報を発信したりするのは、私たちの方が早く、得意だと思います。ですから、共存共栄を図ることが必要であり、一人勝ちをもくろんだり、やみくもに大きなビジネスを目指したりすることは避けなければなりません」とし、規格外のモモの販売、流通ルートの開拓をさらに進めることを計画している。また、DXの進展をにらみながら、ヘルスケアのプラットフォームの構築などにも取り組みたいという。「地域の課題が何であるかを正しく定義しないと、新しいビジネスを生み出すことはできません。課題を明確にすることによって、経済性と社会性が両立した取り組みを持続可能なものにすることができます。そして、課題の定義は、地域の皆さんと話す中で見つけることができるはずです」。2拠点によって時代を俯瞰女性が生きやすい社会に循環と自然にこだわった商品開発小林氏は地域を回って課題を探しながら、住民と信頼関係を築いていった若者向けワークショップを実施するなど地域づくり事業も手掛ける時代を俯瞰し、時代のニーズを探るためにも、また、情報のギャップを防止するためにも、引き続き福島と東京に拠点を置き、各地の地域と都市をつなぎ、新しい流れをつくり、幸せを循環させていく。今後も女性が生きやすい社会にすることを目標に、女性用ヘルスケア製品の開発などの事業を進める。社内でも、婦人科系健康診断を会社負担で行うなど、女性が働きやすい環境・制度を整備しているが、さらに拡充していく。規格外農産物の活用のように、循環型社会の実現へ向けた取り組みや、防腐剤や鉱物油無添加のヘルスケア製品のように、自然にこだわる商品開発を強化していく。◆規格外だった農産物に価値を創出消費者のニーズを捉えて規格外農産物の販路を開拓。地元産のモモをはじめ、ナシ、ブドウ、リンゴ、カキなどを、生産者から買い取り、産地の情報とともに都市部に出荷。「みんなでもうける」仕組みを構築した。◆食品廃棄物を活用した自社商品の開発地域特産品の製造過程で廃棄される「カキの皮」が含むポリフェノールに着目し、3年かけて女性用のボディケア用品を開発。自社オリジナルブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」として、全国で販売した。ジャパンメイド・ビューティアワード2019で優秀賞を受賞するなど、高い評価を得ている。◆コンサルティング事業も実施地元の産物を使った商品の開発や、交流人口・定住人口の創出などに関するコンサルティングやプロデュースを行い、多方面から地域に貢献する。小林氏は、福島と東京の両方に拠点を置いて、時代を俯瞰し、仲間を増やす取り組みを続けている。516成果とポイント年に向けて新規事業の開始新規のブランド立ち上げ作業効率・生産性向上事業内容の発信・PR2030

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