岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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株式会社陽と人カブシキガイシャヒトビト 専門サービス業/飲食料品卸売業 小林味愛氏[代表取締役] 福島県伊達郡国見町大字塚野目字三本木11-1 080-3559-4725 https://hito-bito.jp/ 2017年 2人(ほか繁忙期を中心にアルバイト7名) 非公開 397万円東京都に拠点を持つ小林味愛氏が、福島県で立ち上げた地域商社。規格外品や特産品の製造過程で出る廃棄物など、地域資源の流通や加工、販売をプロデュースし、地域内外に販売する。 -◆自分にできることで地域に貢献国家公務員もコンサルタントも、地域のためにできることに限界があり、もどかしさを感じて起業。自分にできることで地域に直接貢献することを考える。◆「人の魅力に引かれ」国見町へ果物栽培が盛んな国見町。果物の栽培は時間がかかり、短期で利益を得ることは難しい。それに耐えられる人が多いから、国見町は福島の中でも「悪い人がいない」と言われているのだろう。◆消費者と生産地の価値観にギャップ消費者の価値観は多様化しているが、生産地には「大きく見た目がよい」ことを重視する考えが残っていて、食料ロスや農家の所得減につながっていた。代表取締役の小林氏と「明日 わたしは柿の木にのぼる」の販売ブース2017年8月に陽と人を設立。小林氏は自社を、地域と都市のニーズに即した形で、地域資源を価値化して届ける「地域商社」と規定する。起業の地として国見町を選んだのは「論理的には、競合がいない地域を選びました。非論理的には、いい町だとビビッときたわけです」と笑う小林氏。縁もゆかりも無い土地でまず始めたのは、モモの収穫などを手伝いながら、地域の課題を探すことだった。そこで見つけた課題は、人口が増えていた時代と変わらない農業の在り方だった。例えば、モモは大きくてきれいなものが一番だったが、少子高齢化で家族が少ない現在では、大きなモモは食べきれないこともある。価値観も多様化して、大きさや見た目だけが評価の基準ではなくなってきているが、見た目が悪く小さいモモは規格外として廃棄され、その割合は収穫量の最大40%にもなる。大きな食料ロスを生み、農家の所得にもつながらない。生産地と消費者の間に価値観や情報のギャップがあると、小林氏は見ている。そこで陽と人では、規格外を含めた農産物を生産者から直接買い取り、都市の青果店へ“新たな規格”で流通させる事業に取り組んだ。伊達エリアが発祥の地で、特産品でもある「あんぽ柿」については、製造する過程で廃棄されるカキの皮の活用を考えた。皮に多く含まれるポリフェノールに着目し、その働きを生かしたデリケートゾーンをケアする商品を3年かけて開発。「明日 わたしは柿の木にのぼる」と名付けたブランドで、全国50背景と課題福島県国見町ビジネスで地域の課題を解決するために縁もゆかりも無い国見町で起業 株式会社陽と人代表取締役の小林味愛氏は、東日本大震災を国家公務員として経験した。被災地にボランティアとして赴き、宮城県石巻市でがれき処理などにも当たった。その中で、「国家公務員は被災地から遠く、現場の思いをなかなかくみ取れないと感じました」と、公務員としての限界を感じた小林氏は、株式会社日本総合研究所に転職。コンサルタントとして、農業や観光、医療などに関する被災地の案件に携わるが、「総合計画といったような“絵”を描くことはできるのですが、自分で実現できるか、住民の意見を反映できているのかという点が課題として残ります」と振り返り、起業して、ビジネスによって地域の課題を解決することを選択する。規格外品や廃棄物の活用で規格外品や廃棄物の活用で地域を代表する産品を創出地域を代表する産品を創出株式会社陽と人66

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