岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県飯舘村時間の通勤を苦にせず避難先から工場に通った。こうして主力工場である福島工場は稼働を続け、「お客さまに迷惑をかけることはなかった」(菊池氏)。東日本大震災以降、飯舘村に工場を増設南相馬市にはロボット製造拠点を開設東日本大震災から7カ月後の2011年10月、菊池製作所は大阪証券取引所JASDAQスタンダード(当時)に株式上場した。それは「信頼性、革新性、地域・国際性を備え、一定規模の実績がある企業」として認められたことを意味する。菊池製作所の革新性は、新技術を取り込み事業を発展させているだけでなく、20年以上前から産学連携を積極的に推し進めてきた点にも表れている。2006年には開発研究拠点として社内に「ものづくりメカトロ研究所」を設け、ここを拠点に、現在は47大学、61研究室と共同研究を行っている。菊池氏は、「日本のものづくり産業が量産の海外移転を進め、単純なものづくりでは利益が出せなくなっている。もっと付加価値の高いものづくりを考えていかないといけない」と考え、新技術の産業化に意欲的に取り組むとともに、その中で生まれた新事業を福島の復興に結びつけていくことも構想していた。その具現化の一つが、避難していた川内村民の帰村に協力する形で2012年に新設した川内工場だ。「人を呼び込むためには川内村に最新技術を持っていくことが効果的」(菊池氏)との考えから、M&Aで取得した金属鋳造の革新的手法、ホットチャンバー式アルミダイカストの技術を川内工場で事業化して、帰村民の雇用の受け皿をつくった。そして、高付加価値の新しいビジネスモデルとして、今、菊池氏が最も注目しているのが「人をサポート・アシストするサービスロボット」だ。「想定される市場規模が産業用ロボットより大きく、介護事業などの生産性向上を促すなど社会的波及効果も大きい」と菊池氏は語る。そのサービスロボットの製造拠点として、2016年2月、南相馬市小高地区に南相馬工場が新設された。それに先立つ2013年には、飯舘村に福島第七工場が増設され、ロボットに不可欠の半導体製造装置関連部品の受託製造も始まっている。菊池製作所の次の成長に向けた新事業が、飯舘村・南相馬市で胎動を始めた。大学とのコラボレーションで生まれた数々の製品が並ぶ本社ショールームものづくりを「どう生かすのか」を創造することが重要で、そこに新しいビジネスモデルが生まれる。一社だけでやっていくのではなく、コラボレーションの時代。相手企業を育て、自分の仕事を生かし、社会に貢献する。そんな「三方良し」の理念が大事だと考える。◆社員が放射線対策に協力社員には出社を強要せず、各自の判断に任せた。避難先から工場に通った社員が、自主的に放射線を軽減させる取り組みに協力するなど、さまざまな対策を実行し、工場は稼働を継続した。◆新技術を取得し川内工場で事業化革新的ダイカスト技術をM&Aで取得。その技術の事業化を、避難者の帰村に協力するために新設した川内工場で行った。◆サービスロボットの製造拠点を新設付加価値の高いビジネスモデルとして、サービスロボットに着目。大学の研究室と連携し、開発・事業化を推進。2016年、南相馬市に工場を新設した。2023年春、福島市にロボット開発拠点を新設福島県内の交通の要衝である東北中央自動車道、福島大笹生ICの近くに、2023年春、医療・介護向けなどのサービスロボットの研究開発拠点を新設し、製品を体験できる展示場も設ける予定だ。訪日外国人に対するアピールも含め、福島のロボット産業のPRを目指す。ベンチャーで日本のものづくりの飛躍を大学・研究機関との連携で、製品化に移行したおよそ20の事業について、共同出資の形でベンチャーを設立。1社でも多くの企業のIPOを実現させたいと考えている。ベンチャーが数多く生まれ、活力に富み、成長する社会の実現に貢献したい。これからのものづくりはコラボだ453成果とポイント年に向けて新商品の開発新規事業の開始作業効率・生産性向上人材育成2030

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