岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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株式会社テラ・ラボカブシキガイシャテララボ 輸送用機械器具製造業  松浦孝英氏[代表取締役] 本社:愛知県春日井市不二ガ丘3-28TERRA LABO Fukushima:福島県南相馬市原町区萓浜北赤沼184 南相馬市復興工業団地 0568-53-4501(本社) 0568-53-4502(本社) https://terra-labo.jp 2014年 非公開 3億3,910万円 代表取締役の松浦孝英氏は、以前、公共政策や災害対策の研究に携わっていて、「航空」と「災害対策」をつなげてイノベーションを創出しようと、起業。社名には「宇宙から地球を考えるチーム」という意味を込めた。 13人◆イノベーションの創出2011年に愛知県が「アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区」に指定されたことをきっかけに、新しい航空産業の在り方を模索する中、航空機の技術革新を災害対策の領域に活用し、イノベーションを起こすことができるのではないかと構想した。◆原子力災害被災地の復興への貢献原子力災害被災地の復興は国民的課題。復興に貢献したい思いを持ちつつ、「公共政策」という視点で考えたとき、単なる経済的復興を超えて、人口の流出を止めたり、若い世代に夢を持たせるといった取り組みが“復興の軸”として必要だと考えていた。代表取締役の松浦氏は「原子力災害からの復興は日本人としてやるべきこと」と語る2019年9月、南相馬市にある福島ロボットテストフィールド(以下、ロボテス)の研究棟研究室の第一次入居が始まった。第一次入居企業の一つが、愛知県春日井市に本社を置く株式会社テラ・ラボだ。テラ・ラボは、高い確率で発生が予測される南海トラフ巨大地震への対応を想定しつつ、「固定翼の無人航空機を開発し、災害対策として社会実装していく」ことを目指し、2014年に設立された研究開発型ベンチャー。では、なぜ愛知県のベンチャーが南相馬に拠点を構えたのだろうか。代表取締役の松浦孝英氏は、次のように話す。「私たちは、2018年8月、北海道大樹町で、翼長4mの固定翼無人航空機の100km自動制御飛行試験に成功していました。実用化に向けて次の段階に進むためにより多くの飛行試験を行う必要があり、滑走路が建設できる場所を探していましたが、これがなかなか見つからない。そんなとき、福島県名古屋事務所の方からロボテスを紹介されました。2019年2月、企業立地セミナーに参加し、建設中のロボテスと福島第一原子力発電所などを訪れました。原子力災害から8年たった被災地の現状は、とても衝撃的でした。原子力災害からの復興に関わることができるのであれば、それは日本人としてやるべきことだろうと、強く感じました。ロボテスには、滑走路のほかにも、実用化・量産化拠点として私たちが求めていたものの大半が整っています。それで、その日のうちに、ロボテスに研究開発拠点を構えることを決めました」。こうして、「イノベーションの創出」と「原子力災害からの復興への貢献」を両立させて取り組む道を選んだ。間もなく、量産・管制・データ解析を担う新施設「TERRA LABO Fukushima」が竣工ロボテス入居直後の2019年10月、不幸にもそれまでの研究成果が生きる機会が訪れた。台風19号が各地に記録的大雨をもたらし、南相馬市内でも堤防決壊、土砂崩れなど甚大な被害が発生した。テラ・ラボは、かねて開発を進めていた「ドローンを活用した広域災害情報収集クラウドシステム」40背景と課題固定翼長距離無人航空機の研究開発・実用化拠点として、南相馬は最適の環境福島県南相馬市「航空」×「災害対策」で「航空」×「災害対策」でイノベーション創出と復興支援をイノベーション創出と復興支援を株式会社テラ・ラボ

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