岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
4/114

監修委員座談会東北学院大学 教養学部 地域構想学科 教授株式会社エスト・コミュニケーションズ代表取締役法政大学大学院人文科学研究科地理学専攻博士課程中退。岡山大学文学部助教授、富山大学経済学部教授を経て現職。東日本大震災後の復興政策について論文を発表。富県宮城推進会議幹事(宮城県)、多賀城市復興構想会議会長、石巻市・山元町復興有識者会議委員、仙台市復興推進協議会長、復興庁ハンズオン事業等を歴任。東京・浅草生まれ。法政大学法学部卒業。クリエイターとして商品開発、広告・販促キャンペーンを成功させる。1994年、株式会社エスト・コミュニケーションズ設立後は「ものづくりマーケティング」を標榜し、日本の土台で ある中小製造業を、その下から支えるコンサルタントとして活動。座長モート会議が普及したように、コロナ禍によって、10年先の世界に放り出されたような感じがします。阪神・淡路大震災でも、東日本大震災でも同様のことを感じました。柳井 少し先の未来がいきなりやってきたという感じですね。田村 人口減少についても、10年先に一気に進んだように思います。東日本大震災以前の人口を回復するということが、復興の目標の一つとなってきましたが、新たな目標が必要になっています。企業も、売上高や従業員数といった目標を見直すことが求められています。マーケットにしても、海外市場、外国人労働者の問題は、社会の課題になっています。厳しい状況や課題がある中で、今回の事例集では、次の10年を先取りするようなチャレンジをしている企業が登場しています。このような新しい芽を大切にしたいと思います。4柳井 雅也氏(やない・まさや)弓削 徹氏(ゆげ・とおる)柳井 東日本大震災から10年。新型コロナウイルス感染症や、相次ぐ風水害など、被災地の企業は新たな困難への対応を迫られています。東北の人口減少も厳しい状況になっていて、2020年の国勢調査の速報値では、前回調査から5年間で被災3県の人口は17.8万人も減りました。これは全国の人口減少数の約2割に相当します。全国における当該地域の人口比は4.2%ですから、相当な人口減少と言えます。さて、この10年について、皆さんの感想をお願いします。田村 被災地では復興五輪への期待もあって、2020年が一つの目標になってきましたが、コロナ禍で1年延期になり、復興五輪のコンセプトも曖昧になって、目標を見失ったようなところがあります。一方で、リ弓削 現在、中小製造業が困っているのは、コロナ禍でリアルな展示会などが開催できないことです。販路開拓などにも支障が生じています。東北3県も同様の状況ですから、通信販売やブランド価値の発信、クラウドファンディングなど、さまざまなことにインターネットやSNSなどをしっかりと活用することが重要です。また、ありがたくない経験ですが、災害経験を強みに変え、利益だけを求めていると取られると困るのですが、新しい産業に育てるということが、今後あってもいいと思います。柳井 防災産業の分野を育成するということですね。弓削 そうですね。減災や復旧支援などのノウハウを国内はもちろん、海外でも役立てていくわけです。中小東日本大震災から10年復興の歩みを振り返って災害経験を新たな産業に防災産業という発想次のステージを歩み始めた次のステージを歩み始めた東北の先進企業 東北の先進企業

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る