岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県■尾村年に向けて環境負荷の小さい事業に地域の魅力を伝える存在に福島県をコチョウランの一大産地にさらに働きがいのある環境を整備杉下氏は「福島県を全国有数のコチョウラン産地にする」と目標を話すハウス内で栽培するため風評の影響を受けない事業開始当初から、ハウスの冷房などに自前の太陽光発電を使用するなど、環境負荷の低減を意識している。電気代の低減にもつながるため、今後も強化していく。葛尾村をはじめ、浜通りを巡るグリーンツーリズムによって、人流の増加、交流の活性化を図る。その一つのポイントとして機能していく。埼玉県知事賞受賞などで評判が高まり、視察の申し込みも増えている。ノウハウを提供するとともに、福島県内での生産拠点を増やしていき、福島県を全国でもトップクラスのコチョウラン産地にすることを目指す。雇用をさらに増やすためにも、働きやすく、かつ働きがいのある環境の整備が今後も求められる。さらなる高付加価値化によって、地域の期待に応えたい。◆風評の恐れ無く需要予測が立てやすい温室で育てるコチョウランは風評の恐れが無く安心して栽培できる。贈答品で法人需要が多いため、需要予測が立てやすく、計画的で効率的な栽培も可能。◆月間4,000株の出荷を実現コロナ禍の影響を受けた2020年を除き、月間4,000株という出荷目標をクリア。2021年は5万株の出荷を目指し、3年後の事業収支の黒字化を計画している。◆軽作業中心の農業で地域雇用に貢献コチョウランはほかの農作物よりも栽培に労力を必要とせず、高齢の農業従事者が多い葛尾村に適した事業。現在17人が働いており、葛尾村在住者は8人となっている。強過ぎても花に悪影響を与える。「油断すると、花に黒い斑点が出てしまいます。見た目がすべての花ですから、そうなると商品価値は無くなってしまいます」。管理には細心の注意が必要と杉下氏は説明する。また、コチョウランは高温障害を起こすので、夏のハウスには冷房が欠かせない。冷涼な葛尾村は夏場の温湿度管理がしやすく、栽培に適していた。これからファンを増やしたいのはコチョウランではなく「hope white」かつらお胡蝶蘭では、月間4,000株のコチョウランの出荷を目標としていて、2019年は年間4万9,600株を出荷することができた。2020年はコロナ禍の影響で4万300株にとどまったが、2021年度は5万株を超える出荷を目指している。順調なスタートを切った杉下氏たちは、「hope white」と名付けた自社のコチョウランの客観的な評価を知りたいと、埼玉県の品評会に2018年、2019年と出品。「hope white」は見事に連続して賞を獲得した。特に2019年には最高賞である「埼玉県知事賞」を受賞。「栽培を始めたのが最近で、経験も少ない私たちが評価されて自信になりました」と杉下氏は喜んでいる。受賞によって視察の申し込みも増えたそうだ。これからの課題について杉下氏は、「コチョウランが欲しいのではなく、『hope white』が欲しい人を増やすことです」と語る。商品や産地を指定してコチョウランを求める人が少ない現状を変えて、「hope white」のファンを増やすことが目標だ。そのために、3年後に事業収支を黒字に転換するとともに、かつらお胡蝶蘭を学ぶ場、情報発信地にすることを考えている。そして、15年後には福島県内での生産拠点を15カ所に増やして、全国でトップクラスのコチョウランの産地にすることを目指すとしている。コチョウランの栽培を通じて、葛尾村や浜通りの魅力を伝える入り口になり、交流人口を増やすことにも貢献したいと、杉下氏の夢は広がっている。3709成果とポイント新規事業の開始新規のブランド立ち上げ事業内容の発信・PR2030

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