岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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かつらお胡蝶蘭合同会社カツラオコチョウランゴウドウガイシャ 農業 松本政美氏[代表社員] 福島県双葉郡葛尾村大字落合字菅ノ又148-2 0240-37-4380 0240-37-4381 https://hopewhite.jp/ 2017年 1億1,700万円(2020年度)、1億円(2019年度) 300万円 葛尾村の農業者3名と、村内出身者が代表を務める東京都の株式会社メディオテックにより、2017年1月に設立。贈答用として通年需要があり、風評の影響を受けにくいコチョウランを栽培。 17人◆営農再開に向けて新たな農作物を模索葛尾村は優良農地が放射性廃棄物の仮置場になるなどしたことから、営農再開に向け、新たな農作物を模索していた。◆農作物に対する風評の問題従来の農産物は風評の懸念があり、売り上げ、価格に不安がある。また、途切れた販路の再建は簡単ではなく、大きな労力を必要とする。◆高齢者でも可能な仕事をほかの地域と同様に、高齢の農業従事者が多い葛尾村では、肉体的な負担の大きい農作業は難しくなることが想定される。そうした実情も踏まえた農作物の選定が必要となってくる。かつて葉タバコの乾燥施設があった場所にハウスを整備葛尾村は2016年6月に避難指示解除準備区域および居住制限区域が解除された。「葛尾村での生活をようやく再開できるようにはなったものの、課題は何で生計を立てるかでした」と話すのは、かつらお胡蝶蘭合同会社業務執行社員、杉下博澄氏。杉下氏は葛尾村の出身で、被災時には田村市で会社員をしていたが、生活感の無くなった村の復興に携わりたいと考えていた。村の主要産業は農業だが、優良農地が放射性廃棄物の仮置場になるなどしたことから、営農を再開できない状況が続いていた。また、風評の懸念があり、販路も改めて確保する必要があるなど、状況は厳しい。営農再開に向けて新たな農作物が模索されていた2015年、村内出身者が代表を務める株式会社メディオテック(東京都)が、葛尾村にコチョウラン栽培施設の設立を計画する。温室で育てるコチョウランは風評被害とは無縁で、贈答品としてのマーケットも確立している。しかも収益性が高い。栽培に関する技術やデータなどで参考にできるものも豊富にある。コチョウランに可能性を感じた杉下氏は、会社員を辞め農家として村に戻ることを決める。村とも連携しながら、志を同じくする葛尾村の2農家・メディオテックと共同して、2017年1月にかつらお胡蝶蘭合同会社を設立。栽培に向けて技術指導を仰ぐとともに、千葉県、群馬県、山梨県などの他産地の視察なども行った。栽培現場のハウス室温は自動制御で、かつて葉タバコの乾燥施設があった場所に確保した。2018年1月からコチョウランの苗を育て始め、5月から6月には福島市や宮城県仙台市にプレ出荷を実施。市場や消費者の反応や評価を確認した上で、7月から東京都への出荷を開始した。コチョウランには年度の切り替え時期や、株主総会が集中する時期など、定番の需要期があるという。「選挙などのように、確実に需要が見込めるイベントなどは、前もってスケジュールが分かっていることが多いので、需要の予測が立てやすいのもありがたいですね」と杉下氏は言い、自信を持って栽培をスタートすることができたという。コチョウランの栽培は日照時間や外気温の影響を受け、寒い時期は生育速度が遅くなるが、気温が高過ぎても日射しが36背景と課題葛尾村での生活を再開するために安心して栽培できる農作物を福島県■尾村コチョウランの栽培によってコチョウランの栽培によって生活の再建と村の活性化を生活の再建と村の活性化をかつらお胡蝶蘭合同会社0909

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