岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県双葉町てしまい、現地で仕入れる手段をつくるには、僕が動くしかないと思いました」と、伊藤氏は新しい事業に挑んだ背景を教えてくれた。現場のニーズに応え復興の一助に復興後を見据えて新事業を模索伊藤物産のオープンは、町の復興工事に関わる人々の助けになっている。双葉町で復興工事を行う事業者は、いわき市や南相馬市から資材を運んでくることが多い。もちろん、当日使用するものは持ってきているが、現場の状況によって資材が不足するケースもある。「資材を再調達するにはいわき市へ戻るか、車で20~30分ほどかかる南相馬市まで行かなければいけない状況でした。まだオープンして1年ですが、『ここに店があると助かる』という声を聞くので、やって良かったと思います」と伊藤氏は笑顔を見せる。店の中を見渡すと、セメント類の袋が山積みにされているスペースもあれば、ネットやロープ、工事用黒板など現場に欠かせないアイテムが所狭しと並べられているスペースもある。また、町にコンビニが無いこともあり、店の前に自動販売機を設置したり、アイスの販売を始めたりとニーズに応えている。充実したラインアップをそろえている印象だが、課題は多いという。「こちらの考えと業者のニーズがマッチしない部分もあるので、今後は、その穴を埋めながら会社としての強みとなる部分を出していかなければいけないと思っています」と話す。2022年春の居住開始へ向けてインフラ整備が急ピッチで行われている双葉町だが、課題も山積している。復興庁や双葉町などによる2020年の調査では、町へ戻りたいと答えた人は10.8%だ。それでも新会社を立ち上げたからには、祖父が守ってきた工務店のように1年でも長く愛される会社にしたいという思いもある。「今後、会社がどのように成長するかは、町がどう再建されていくかにもよります。だからこそ、伊藤工務店はもちろん、町ともしっかり連携をして新しい事業も進めていきたい」と先を見据えた言葉を残す伊藤氏。店にはやや似付かわしくない、双葉町の伝統工芸品である双葉ダルマが置いてあるのも、その理由の一つだ。海外へ向けての情報発信も町の復興にひも付いた新事業を季節商品としてアイスの販売を行い、作業員に喜ばれた2022年春から人が住めるようになれば、病院をはじめとする生活に欠かせない施設は不可欠なものになる。10年、20年後、双葉町に活気が生まれるためにも、伊藤工務店と協力しながら町の建築業を支える力として成長し、町の発展にも貢献していきたい。ドイツの公共放送局から取材があり、海外からの注目が高い町であることを認識した。小売業・卸売業としての役割を果たすだけでなく、海外の方々にも双葉町がどのように復興したかを見てもらえるように、情報発信を行っていきたい。2020年8月のオープンから1年がたった。当初思い描いたものがすべてできているわけではないが、徐々に商品が充実しており、会社としての土台は固まりつつある。あと数年で軌道に乗せることを目標にがんばり、それからは町の関係者とも協力しながら、新しい双葉町のまちづくりに貢献できる新事業に取り組んでいく。◆町内工事業者との連携を強化販売する商品については、町内の復興工事と関連のある事業者の意見を反映。現場の声をじかに聞くことで過不足の無い商品を取りそろえていった。◆日用品も充実させ作業員をケアオープン当初は建築資材、事務用品のみを販売。しかし購入に来る作業員の心が休まればと、2021年から飲料水やアイスの販売も始めた。◆特産品のアピールも視野に放射能汚染による風評は、収束するかいまだ不透明。物産店として、特産品のアピールにも力を入れていきたい。3508成果とポイント年に向けて町に必要なインフラ整備を加速新規事業の開始事業内容の発信・PR2030

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