岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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3代にわたる家業を継ぐため地元に戻り復興に必要な流通を担う新会社を設立◆2020年3月まで全町避難が続く東日本大震災後の放射能汚染により、双葉町は2020年3月に町域の約5%に当たるエリアで避難指示が解除されるまで、約9年全町避難が続いていた。伊藤物産株式会社イトウブッサンカブシキガイシャ 各種商品小売業 伊藤拓未氏[代表取締役] 福島県双葉郡双葉町中野竹ノ花7 0240-23-7806 0240-23-7807 https://it-bssn.jp/ 2019年 非公開 100万円 建設や建築に不可欠なセメント類、ネット、ビスなどの資材のほか、ショベル、レーキなど作業工具を販売。2021年6月からは食料品などもそろえ、双葉町の復興に取り組む作業員の手助けをしている。 2人◆双葉町内での工事用資材の調達が困難双葉町の復興工事には多くの事業者が関わっているが、町内では資材を調達できず、不足した場合にはいわき市か南相馬市まで行く必要があった。◆町内居住開始後、町をどう復興するか双葉町が復興、または新しい形で昔の活気を取り戻すためには、どれだけ人が戻ってくるかが鍵。そのためには新規事業の展開も考える必要がある。2020年8月に開店。東日本大震災後、双葉町に初めてオープンした小売店となった工事用の資材調達を行うことで「双葉町の復興に貢献したい」と語る代表取締役の伊藤氏2020年3月4日。東日本大震災後の福島第一原子力発電所の事故の影響で全町避難が続いていた双葉町の約5%に当たるエリアが避難指示解除となった。そして、2022年春には、町域の10%に当たる特定復興再生拠点区域の避難指示解除も予定されており、人の居住も認められる。東日本大震災から10年がたち、ようやく復興へと一歩足を踏み出した双葉町で、2020年8月に被災後初めて小売店を開業したのが伊藤物産株式会社だ。大きな店舗ではないが、建築資材や測量機材、作業工具など充実のラインアップを誇っている。それでも「まだ補えていない部分もあるので、徐々に増やしていけたら」と代表取締役の伊藤拓未氏は話す。伊藤物産は、地元で50年以上続く株式会社伊藤工務店の資材部門として立ち上げられた。伊藤工務店は福島第一原子力発電所の工事に参入したことをきっかけに創業。その後も原子力発電所関連の仕事を請け負う傍ら、大手ゼネコンなどとも数多く取引を行い、地元の総合建設業として大きく成長した。被災後は東京電力の復旧工事をはじめ、除染作業など復興へ向けたさまざまな事業にも積極的に取り組んでいる。祖父、父、叔父と3代にわたる家業の灯を絶やしてはいけないと、伊藤氏は弟と一緒に地元へ戻り伊藤工務店に入社。建設現場や資材についての勉強をする中、現場で働く人間から、工事用の資材調達がスムーズにいかないケースがあることを聞く。そこで伊藤氏は、これまで培ったスキルを生かして資材部門を立ち上げれば問題がクリアになると考え、新会社として伊藤物産を立ち上げることを決断した。「取引先のゼネコンからも資材調達についての相談が多かった。昔あった金物屋も東日本大震災後に無くなっ34背景と課題福島県双葉町東日本大震災後、町内初の小売店開業東日本大震災後、町内初の小売店開業双葉町復興の一翼を担う双葉町復興の一翼を担う伊藤物産株式会社0808

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