岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県田村市年に向けて取れる方式を考えました」と説明する本間氏。課題を一緒に解決しようという本間氏の姿に、協力してくれる農家も現れた。2017年には田村市の農家と国産ホップの試験栽培を成功させ、その後も契約農家は拡大。「田村方式」と名付けた独自の栽培方式は、丁寧な手摘みを行えるため、機械での収穫よりも、より豊かな風味を持つことも特徴だ。クラウドファンディングで改修費用を調達ブルワリーを核として施設を整備2020年にはグリーンパーク都路内に農地を整備して、自社でもホップ栽培を開始。9月には、グリーンパーク都路内の建物を改修した醸造施設「ホップガーデンブルワリー」が完成する。改修費用はクラウドファンディングで調達し、目標金額を上回る352万円の支援を受けるなど、期待も大きい。田村産ホップを使ったビールの仕込みもスタートし、11月から2種類のビールを発売した。現在は、阿武隈地域の魅力を伝えようと名付けた「Abukumaシリーズ」5種類が追加され、全7種類を販売。さらに季節に合わせたビールも開発・販売する計画だ。2020年度はビール醸造の初年度であり、生産量は約60kL。当面は年間100kLを目標としている。自社でのホップ栽培、醸造を達成した本間氏が目指しているのは、クラフトビールを基点にした「循環」だ。ホップ栽培をビール醸造・販売につなげ、醸造の残りかすをホップ栽培の肥料や家畜の飼料にし、余った酒を使って発電し、またホップ栽培に戻すという、1次産業から6次産業までをつなげる「循環」を展開したいとしている。また、2021年4月には、グリーンパーク都路のキャンプ場をリニューアルオープン。ビールの原料にするために栽培している小麦を使ったパン作りや、レストランの運営なども計画されている。ホップジャパンの循環の輪は、さらに大きくなる予定で、雇用を生み出し、地域を活性化させることが本間氏の構想だ。ビールを軸に循環を構築会社も働き方も新しいものに「あぶくま」の魅力を発信「陰陽五行説」をテーマにした7種類のビールを販売タップルームではブルワリーを眺めながらビールを楽しめるホップガーデンブルワリーを基点に、ビール、畜産、ホップ栽培、そしてビールと産業が循環する仕組みを構築。持続可能なコミュニティーの実現を目指していく。ヒエラルキーの無い会社を目指し、経営状態も社員に公開している。また、完全フレックス制を導入するなど、新しい形の働き方を模索している。あぶくまは魅力にあふれた地域だが、地域全体でのブランディングはこれからの課題。「Abukuma」シリーズやホップジャパンの取り組みを通して、地域全体のイメージアップや、新たな魅力の創出を図っていく。◆クラウドファンディングで改修費用調達2019年に復興庁のクラウドファンディング支援事業の支援を受け、休眠状態だったグリーンパーク都路内の建物をブルワリーに改修する費用をクラウドファンディングで調達。目標金額300万円に対し、48日間で177人から352万円の支援を受け、プロジェクトを成立させた。◆ホップ農家の課題を新方式で解決ホップの収穫は、脚立を使った高所での作業となり、危険を伴う。そこで、ホップのツルが巻き付く紐を、ワイヤーごとウインチで下げることができるようにする「田村方式」を開発。高齢者でも安心して作業ができるようになり、作業の効率化にもつながった。協力農家の輪も広がり、田村市でホップ栽培に挑戦する農家が増えてきている。◆地域の雇用創出に貢献田村方式によるホップ栽培は、高齢者や女性も働きやすく、雇用創出に貢献。ホップジャパンの社員も、2018年の2人から、2021年には6人に増加した。3307成果とポイント新規事業の開始新規のブランド立ち上げ作業効率・生産性向上事業内容の発信・PR2030

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