岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県大熊町2014年10月に建設された、メガソーラー発電所「ソーラーパークならはⅠ」広野事務所内には福島第一原子力発電所のモックアップが用意され、遠隔操作ロボットのテストが行われている大熊町にある本社は、2011年3月11日の夜からずっと立ち入りが禁止されている。2012年6月、広野町に事務所を確保し本社機能を移したが、本社の所在地は大熊町のままにしている。それは、「必ず大熊町に戻るんだ」という固い決意の表れ。復興が進んでも、10年前の3.11で抱いた思いは忘れずに、これからも事業に取り組んでいく。◆廃炉に向けて、ロボット開発を強化この先も続く廃炉作業において遠隔操作ロボットの必要性は高まっており、ロボット開発力の強化、遠隔操作技術の向上に取り組んでいる。◆ロボット技術を他領域にも展開廃炉作業で培ったロボット関連の技術・ノウハウを元に、多岐にわたる分野へのロボット導入に挑戦。メーカー向け産業用ロボットや介護ロボットの開発が始まっていて、新たな領域でのビジネスの立ち上げが期待されている。◆蓄電システム開発などにも取り組むエネルギー事業では、発電プラント建設から発展する形で、水素燃料電池の蓄電システムや再生可能エネルギーを活用した燃料電池システムの開発に取り組み、再生可能エネルギーの安定供給を支える技術の構築を追求している。いわき市に国内最大級の木質バイオマス発電所を建設中で、2022年4月に稼働予定。廃炉で培った技術を地場で生かしたい廃炉事業を通して、さまざまな技術を獲得した。今度は、その技術を地場で生かし、双葉郡全体の発展と地域の役に立つことを目指していきたい。また、廃炉作業を通して、われわれは東京電力と自治体、双方と関係を築いてきた。この地域の再生の鍵となる両者に対して、さまざまな取り組みを進めながら、橋渡しとして機能するように努める。ハード面だけではなく、そうしたソフトの面でも、役立っていきたい。了させた。東京電力からは「歴史的な快挙」と称賛された。さらに、それまでの廃炉工程で最大級の難工事といわれた1・2号機排気筒上部の解体工事でも、大手企業と競う中、提案が採用され、受注。2020年5月に工事を完了させた。佐藤氏は、元請け企業へと成長できた要因として、①中小企業の利点を生かした迅速な意思決定、②“有益なパーツを組み合わせ、ソフト開発で命を吹き込む”という手法による工期短縮とコスト削減の実現、③構造物を熟知していたことによる知見の豊富さ、④その知見を生かしたロボット開発・製造と緻密な工事手順、⑤地元・福島の企業としての復興への熱い思いと行動力、という5つの点を挙げている。これらの強みが、もう一つの新事業であるエネルギー事業においても発揮され、急速に実績を伸ばしている。2013年10月に「ソーラーパークひろの」(出力413.3kW、広野町)、2014年10月に「ソーラーパークならはⅠ」(出力1,990kW、楢葉町)、2016年3月に「ソーラーパークならはⅡ」(出力750kW、楢葉町)と、相次いでメガソーラー発電所を建設。さらに、いわき市に国内最大級の木質バイオマス発電プラントを建設中で、2022年4月の稼働を予定している。2021年7月には、「ゼロカーボン推進による復興まちづくり」を掲げる大熊町と、地域新電力会社を共同で設立する協定を結んだ。それは、再生可能エネルギーの地産地消を通じて、エイブルが大切にしている「地域との共生」の理念を具体的に実践していこうとするものだ。10年という時間の中で、エイブルは確かな発展を遂げている。そして、故郷の復興に貢献したいと多くの若い技術者たちがUターン入社しただけでなく、2013年からは毎年10人程度の新卒者の採用が始まり、社員数も、復興に懸けるパワーも、大幅に増した。こうした情熱あふれる地元企業の歩みが、被災地域の未来を切り開いていくのだろう。3106成果とポイント年に向けて必ず、本社のある大熊町に戻る新規事業の開始グローバルな取り組み作業効率・生産性向上人材育成2030

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