岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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一方、経営の面から見ると、東日本大震災以前は、売り上げの7~8割を福島第一・第二原子力発電所関係の業務で上げていた。福島第一原子力発電所の事故は、エイブルという会社の先行きを分からないものにしてしまった。その中で代表取締役の佐藤順英氏は、「あの絶望的な状況でも福島を守るために尽力した社員を誇りに思った。社員こそエイブルの宝で、社員を守るために死に物狂いでエイブルを立て直す」と誓った。そして、①福島第一原子力発電所構内で作業する社員を被曝から守るための遠隔操作ロボットの開発・製造、②線量限度を超えて被曝した社員が働ける場としての再生可能エネルギー事業という、2つの新事業に取り組むことを決めた。大手メーカーが無理だと言った難工事をエイブルのロボットがやり遂げた!ゼロからスタートしたエイブルのロボット事業が、2016年、奇跡を起こす。福島第一原子力発電所1・2号機の排気筒下部の地下槽(ドレンサンプピット)に溜まる汚染した雨水の排水除去作業で、大手プラントメーカーが「開発に3年はかかる」としたロボットを半年で完成させ、排水業務を無事に完株式会社エイブルカブシキガイシャエイブル 金属製品製造業 佐藤順英氏[代表取締役] 本社:福島県双葉郡大熊町大字夫沢字中央台551-6広野事務所:福島県双葉郡広野町大字上北迫字岩沢1-9 0240-25-8996 https://www.able-can.jp 1991年 非公開 3,669万5,000円 電力プラントを中心に、プラント関連の幅広い業務を手掛ける。原子力発電所のメンテナンスの技術力は高く評価されている。2016年には、三菱重工業株式会社から受託し、初の海外事業となるスウェーデンのリングハルス原子力発電所の大型保全工事を完了させた。 0240-25-8997(広野事務所) 215人◆福島第一原子力発電所の事故の拡大抑止福島第一原子力発電所1、2、3号機は炉心溶融を起こしたと考えられ、さらに、1、3、4号機建屋は水素爆発を起こした。これ以上の事故の拡大を防ぐため、一刻も早い原子炉の冷温停止が求められていた。◆廃炉作業への遠隔操作ロボットの投入福島第一原子力発電所構内で作業に当たる社員を放射線被曝から守るには、遠隔操作で作業に当たるロボットの開発・製造が不可欠だった。◆線量限度を超過した社員が働ける場所の確保線量限度を超過して被曝した社員は、一定期間、原発構内の作業に従事することができなくなる。現場に精通した優秀な社員はこれからの作業に絶対に必要で、働く場を確保し、雇用し続けることが必要だった。代表取締役の佐藤氏は「必ず大熊町に戻る」と力強く語る30背景と課題福島県大熊町社員を守り、働く場を確保するためロボットとエネルギー2つの新事業に挑戦津波による浸水で全電源を喪失し、福島第一原子力発電所は未曾有の危機に陥った。その危機に最前線で立ち向かった人々の中に、多くのエイブル社員もいた。株式会社エイブルは、主に原子力発電所のプラントメンテナンスを行う、地元・大熊町の企業。当時は50人足らずの小さな会社だったが、社員のほとんどが双葉郡出身で、混乱を極める現場にあって「ふるさとを守る」と、士気は極めて高かった。電源の確保、燃料プールなどの冷却作業、冷却水循環系配管の敷設、燃料プール冷却システム電気工事など、発災直後から混乱収束のための主要プロジェクトのほとんどに下請けとして参画。寝る暇も無くろくに食事も摂れずに24時間作業が続く日々が、1カ月ほど続いた。その後も、原子炉を安定して冷やし続けることができるようになり、燃料プールの水温が十分に下がった8月の半ばごろまでは、まったく気は抜けなかったという。新規事業が会社を大きく飛躍させ新規事業が会社を大きく飛躍させ地域と共生する未来を切り開く地域と共生する未来を切り開く株式会社エイブル0606

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