岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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かわうちワイン株式会社カワウチワインカブシキガイシャ 農業/飲料・たばこ・飼料製造業 猪狩 貢氏[代表取締役] 福島県双葉郡川内村大字上川内字大平2-1 0240-25-8868 0240-25-8869 https://www.kawauchi-wine.com/ 2017年 4人 非公開 750万円 川内村の復興、新たな農業への挑戦、村の交流人口や定住人口の拡大の取り組みとして、村の「高田島ヴィンヤード」で収穫するブドウを利用したワイン生産を目指す。◆持続可能な農業のために川内村の農業の持続可能性、若い人の帰村や雇用の場の確保を考えると、基幹産業である農業の体制整備や、収益性の高い作物の開発が必要との認識が関係者に共通してあった。◆村の冷涼な気候に適した農産物阿武隈山地にある川内村は、冷涼な気候を好むブドウ品種の栽培に適している。一般社団法人日本葡萄酒革進協会からのワイン用ブドウ作りの提案は、川内村の可能性を気付かせてくれるアドバイスとなった。◆ワインの産業化で交流人口を拡大川内村産ブドウでワインを造り、飲食店や観光施設などで提供することで、村の交流人口や定住人口の拡大を目指す。そのための施設が必要となる。川内村オリジナルワインの未来を笑顔で話す統括マネージャーの遠藤氏「川内村は水稲、シャインマスカットやピオーネなどのブドウ、イチゴのハウス栽培などが盛んで、山間で育てる野菜やコメには根強い人気があり、ファンもついています」と語るのは、川内村の農業振興に当たっている職員で、かわうちワイン株式会社統括マネージャーを務める遠藤一美氏。川内村は福島第一原子力発電所の事故によって、全村避難を余儀なくされたが、2012年1月には帰村宣言を行い、4月より住民の帰還を開始。2015年には帰還率は5割を超えたが(2017年に8割)、一方で、若者や子育て世代の帰還は進まず、農家の高齢化、担い手不足という課題もある。「人気がある村の農作物も将来は不透明で、雇用の場の確保という課題もありました」と遠藤氏は話す。こうした課題に対して、帰村宣言後から新しい農作物や農業のスタイルの模索がされていた中で、2015年に一般社団法人日本葡萄酒革進協会から、川内村に対してワイン用のブドウづくりの提案があった。日本のワインへの関心、評価が高まり、国内外で一種のブームになっていたこともあって、可能性を感じた村ではブドウ栽培に乗り出すことを決断。畜産振興のために活用する予定で村が所有している草地を、2015年にワイン用ブドウ畑「高田島ヴィンヤード」として開発し、2016年に日本葡萄酒革進協会から提供された苗木2,000本をボランティアや村の職員が植え付けて、川内村のワイン用ブドウ栽培が始まった。2017年8月には、川内村産ブドウでのワイン醸造・販売を目的として、川内村も株主として参加して、かわうちワイン株式会社が設立され、ワイナリーの建設に着手した。2021年現在、栽培されるブドウは約1万3,000本に拡大。シャルドネをはじめ、カベルネ・ソ-ヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワールなどが栽培されている。2020年には川内村産ワイン用ブドウを初収穫したが、ブドウの病気などの影響を受けて収穫量が少なく、山梨県のワイナリーに醸造を委託して完成したワインは、750mLのボトルで700本分だった。2021年はシャルドネの約2tをはじめ、合計約5tのブドウの収穫が目標。2021年6月28背景と課題村の農業を持続させるためにワイン用ブドウ栽培への挑戦を決断福島県川内村ワインの産業化を軸としたワインの産業化を軸とした持続可能なむらづくり持続可能なむらづくりかわうちワイン株式会社0505

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