岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県富岡町◆2017年8月、富岡町に本社を新築、移転富岡町に本社を新築し、2017年8月に移転。双葉地域の復興は道半ばだが、富岡本社が地域の憩いの場、復興業務の拠点として機能し始めている。年に向けてえていた。実際、このときの実績が評価され、同様の海外案件を立て続けに受注し、今や海外での建設コンサルティング事業が経営の一つの柱となっている。2011年に無理を押して海外に出かけた遠藤氏の“経営判断”が奏功した。原子力災害被災地のニーズに対応する過程で、経営が“多柱化”していった復旧・復興関連の業務に取り組みながら双葉測量設計は、多拠点化(郡山市・相馬市・いわき市)し、新たな事業も手掛けるようになった。会社が大きく変化する中、2013年12月に遠藤氏が社長に就任。「事業範囲を『測量設計』に固定化せず、変化する原子力災害被災地のニーズに柔軟に対応していく」という会社の方向性を明示しようと、社名を「株式会社ふたば」に変更した。そして、従来からの①建設コンサルティング、②測量に加え、③空間情報コンサルティング(センシング・ICTを用いたデータの可視化)、④まちづくりコンサルティング、⑤環境コンサルティング、⑥海外での建設コンサルティング事業を展開し、「経営の多柱化」を図った。遠藤氏は、「測量という技術にどういった新しい価値を付加し、どのように応用・展開していけば、地域の課題に応えていけるのかを考えてやってきた。その結果、建設・土木から農業・森林保護・環境分野へと事業の幅が広がっていき、経営の柱が立ち上がっていった」と説明する。2017年4月に富岡町の避難指示が解除され、8月に本社を新築、移転。相馬市といわき市の事務所は閉鎖し、富岡本社と郡山支社の2拠点体制とした。相馬市・いわき市で若手を採用し社員数は増えていたが、原子力災害被災地での勤務を嫌って辞めた社員もいて、手放しで喜べるような“帰還”ではなかった。しかし、遠藤氏はあくまでも前向きだ。「原子力災害被災地の森林は除染もされず手付かずで、測量技術とICTを駆使し、森林の実状と課題の見える化に取り組んだ。会社の事業にはなっていないが、結果的に技術が蓄積され、その技術を使った別の案件の引き合いが来ている。この事例のように、双葉地域の課題と向き合いながら、双葉地域と共に成長していく道を切り開いていきたい」と、語っている。地域づくりプランの策定などまちづくりのサポート業務も実施する双葉地域は、誰もが経験したことのない多重災害に見舞われた。その復旧・復興に取り組みながら、少しでも発信できることを増やしていきたい。そして、取り組みを世界に発信して注目を集め、双葉地域が可能性を期待される地域になることを目指していきたい。この地域の復旧・復興のゴールは、2030年ではない。50年、100年の事業になると予想される。その再生は世界でも例のないものであり、世界から評価されるレガシーとして残していきたいと考えている。結果として、そのプロセスが世界遺産として登録されるような地域づくりに取り組んでいきたい。◆相馬市・いわき市に事務所を開設して対応仕事の現場である浜通りの相馬市、いわき市に事務所を開設して対応した。人員が不足していたが、日本工営OBに協力を仰いだり、現地採用も行った。◆事業領域が拡大し、経営が多柱化「自社にできることは何か」よりも「社会が求めていることは何か」を優先して考え、そのニーズに最新の測量技術で応えてきた。その結果、新業務も手掛けるようになり、「経営の多柱化」が進んだ。先進の遠隔技術を身に付け応用したい廃炉作業を通じて、双葉郡にたくさんの先進技術が集まっている。その先進技術を社会課題の解決につなげていかないといけない。その中でも、遠隔技術を身に付けて、廃炉以外に応用していくことに関わっていきたい。双葉地域が注目される地域になる世界遺産に登録される地域づくりを2704成果とポイント新規事業の開始グローバルな取り組み事業内容の発信・PR2030

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