岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県■葉町「キラキラ輝く憧れの町NARAHA」へ楢葉町周辺には、多様なリソースと「志」を持った事業者が集まっている。それらを連携すれば、福島浜通り独自のSDGsモデルを構築することができる。その中で、楢葉町も福島しろはとファームも発展を続け、誰もが住みたいと感じる「キラキラ輝く憧れの町NARAHA」につなげていきたいと考えている。楢葉町でも「6次産業化+α」を展開サツマイモ収穫には楢葉町の子どもたちも参加して笑顔を見せた2020年10月に完成した国内最大規模のサツマイモ貯蔵施設「らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ」は、6次産業化を体現しているだけでなく、観光・教育・IT農業・地域貢献・子育て・交流を加えた独自の“12次産業化”を目指している。楢葉町でも、福島ならではの要素を加味したテーマパークをオープンさせ、畑発電や原発ツアー、漁業体験、フルーツビューティ、ビオホテルなど「6次産業化+α」を実現し、それらを有機的に結びつけることで、農業を軸にした、より高次元の原子力災害被災地の復興、地域社会創生の姿を描くことを目指す。◆茨城県行方市、続いて楢葉町に進出2015年、日本有数のサツマイモの産地、茨城県行方市に「らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ」を開業。その成功を評価した楢葉町の要請に応じ、2018年から大規模栽培を開始。多産地化を実現した。◆「新3K農業」で女性・若者の就農促進「日本の農業をステキにしよう!」というビジョンの下、IoT化・省力化・高効率化を図った。「きれい・気持ちいい・カッコイイの新3K農業」を展開し、楢葉町など地元出身の女性・若者の就農を促進させた。◆産地を笑顔にして、消費者の不安を払拭永尾氏の「産地の女性・子どもたちを笑顔にすることで、消費者の不安を払拭する」という戦略が奏功し、行方産サツマイモのブランド力は高まった。楢葉町での生産も、順調に規模を拡大している。Uターンする若者も増えた。行方市での挑戦は、地域の復興、社会経済の活性化の、まさに起爆剤となった。白ハト食品工業誘致に楢葉町長が動いた4年目にサツマイモ畑の契約面積44haへこの行方市での事業展開に注目し誘致に動いたのが、楢葉町の町長だった。楢葉町はほぼ全域に出されていた避難指示が2015年9月に解除され、住民帰還、復興の加速が課題となっていた。要請を受けた白ハト食品工業は、2017年、1.5haでサツマイモの試験栽培を実施。栽培適性、収益面での見通しが立ち、翌年からの大規模栽培開始を決めた。楢葉町には、離農したり、帰還しない農家も多く、広大な耕作放棄地があった。その状況を、永尾氏はチャンスと捉えた。耕作放棄地を借り受け、集約し、広い畑に作り変える取り組みを、町の協力を得て推し進めた。その結果、契約面積は2018年に13ha、2021年には44haまで広がった。また、一枚一枚の畑が大きくなったことで、無人トラクター、ドローン、GPSガイダンス、IoTシステムなどが活用できるようになった。永尾氏は「福島だからできる大型農業×IoT=最先端の高効率農業で、『きれい・気持ちいい・カッコイイの新3K農業』を発信していく」と語る。新3K農業は女性・若者も引きつけ、楢葉町・いわき市・富岡町出身者たちが新たに働き始めたという。地元に帰還し、地元で働けることで、楢葉町でも女性・若者たちの笑顔を生み出すことができた。2019年4月、サツマイモ栽培本格化にあわせ「株式会社福島しろはとファーム」を設立し、体制強化を図った。それに応える形で、楢葉町が建設していた貯蔵能力最大1,260tを誇る国内最大規模の甘藷貯蔵施設が、2020年10月に完成。福島しろはとファームが無償で借り受け、サツマイモの通年出荷が可能になった。近い将来、白ハト食品工業が使うサツマイモの15%を、楢葉町が供給する計画になっている。2503成果とポイント年に向けて新規事業の開始新規のブランド立ち上げ作業効率・生産性向上人材育成事業内容の発信・PR2030

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