岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県広野町年に向けて3D地形データ上を自動運転車が走る世界一小さいスマートシティを目指せ未来に向けた投資を拡大しよう2017年に新設したデータセンターでは、新領域での技術活用に取り組む放射線モニタリング情報は、住民が帰還を判断する際の貴重なデータとなったドローンで撮った3D地形データの中を自動運転の車が走ることが将来の目標。その車で買い物に行けるようになるとか、自動運転のトラクターが倉庫から田んぼに行って作業して戻ってくるとか。そうしたことが実現できないかと、今、取り組んでいる。コロナ禍で、田舎の良さがアピールできるのではないか。土地は安く、素晴らしい自然があって、そこで稼げるような環境が提供できればと考える。広野町の人口は約5,000人だが、「世界一小さいスマートシティ・広野」を目指してはどうか。そうした空間づくりに参画していきたい。復興事業もピークを過ぎ、コロナ禍の影響もあって、世の中が疲弊して新しい方向に目が向いていないと感じている。未来に向けた投資を拡大していく世の中とするため、新技術で地域の発展の先導を担っていきたい。◆広野町の「復興計画」作成にも参画2011年4月にはいわき市を拠点に業務を再開。広野町の「復旧計画」「復興計画」の策定にも参画した。また、膨大な復興関連業務と事業拡大に対応するため、2013年から新卒採用を開始している。◆自社開発の技術で放射線量を測定「歩行・走行放射線計測システム」などを開発し、放射線量の正確な計測と迅速な情報共有を実現。除染作業の効率化、町民への情報提供に役立った。◆技術を多方面に応用し、事業領域を拡大「UAVを利用した災害時即時情報収集システム」など自社技術の高度化・応用研究を進める一方、他社との連携も図り、事業領域の拡大に努めている。除染作業が進む中、2012年3月、広野町の役場機能が本来の庁舎に戻る。大和田測量設計も、いち早く5月に事務所を再建し、“帰還”を果たした。その後しばらくの間は、広範囲、多岐にわたるインフラ整備など、本格化する復旧・復興関連事業への対応に忙殺される。広野町の除染は森林等を除き2012年度中にほぼ終了し、復旧・復興事業は次の段階に移っていく。2013年度には、復興のシンボル事業と位置付けられ、大和田測量設計も計画策定に参画した「広野駅東側開発整備」事業も始まった。駅東側地区に整備された産業団地には大和田測量設計も進出し、2017年にデータセンターを新設。GISの運用で磨いた情報処理技術を測量以外の領域でも活用して事業化しようと、意欲的に取り組んでいる。発災から10年。大和田氏は「会社のキャパシティーを超えるような量の仕事を受注し、こなしてきた。会社として体力が付き、次の研究や新しい機器の購入に資金を投下できた」と振り返る。そして、企業の成長という観点で何よりも大きかったのは、「復興庁や大手ゼネコン、大手コンサル、福島相双復興推進機構など、これまで接点がなかった組織や人たちと仕事ができたこと」だという。復旧・復興に取り組む中で多様な連携が生まれ、特にUAVレーザー測量技術を多くの領域で応用、展開するようになった。例えば、AIに強みを持つベンチャー企業と共同で水害予測シミュレーション技術の開発に取り組み、2020年6月、広野町を加えた三者による「AIスマートシティ推進協定」の締結に至った。また、福島工業高等専門学校、地元企業などと共同で、高精度3D地図とAIを組み合わせスマート農業に活用できる技術の開発にも取り組む。測量で復旧の先導を担った大和田測量設計が、次は、新技術で地域の発展の先導を担おうとしている。2302成果とポイント新規事業の開始2012年5月、広野町に本社を再建町の復興のシンボル事業の立案にも参画作業効率・生産性向上人材育成2030

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