岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
22/114

株式会社大和田測量設計カブシキガイシャオオワダソクリョウセッケイ 技術サービス業 大和田幹雄氏[代表取締役] 福島県双葉郡広野町大字上浅見川字山崎50-4 0240-27-4151 0240-27-4875 http://geo999.com 1986年 6億3,900万円(2020年度)、7億3,900万円(2019年度) 1,000万円 東日本大震災以前は、主に自治体が発注する土木関連工事の測量と土木設計の業務を手掛けていた。先端技術の導入に積極的で、UAV航空レーザー、地上レーザーなど最新計測機器を備えるほか、GIS(地理情報システム)技術にも強みを持つ。 40人◆自治体等が進める復興事業への対応広野町長から全町民に避難指示が出された。本社が機能不全に陥る中、自治体が発注する復旧・復興関連の業務に対応しなければならなかった。◆広野町への帰還、地域の復興への貢献いずれ、広野町で本社を再建する考えでいた。さらに、除染、町民の帰還、地域のインフラ整備と続く復旧・復興過程において、「測量」が重要な役割を果たさなければならないことは認識していた。◆復興事業減少後の事業基盤の確立復興関連の事業量は、いずれ減少する。そのときに備え、復興関連以外の領域で安定的な収益が出せるような事業基盤を確立していく必要があった。「未来への投資の拡大が重要」だと代表取締役の大和田氏は訴える広野町は、全域が福島第一原子力発電所から半径30km圏内に入る。福島第一原子力発電所の事故を受け、2011年3月13日に町長から全町民に対し「避難指示」が発令された(4月22日に、広野町全域が「緊急時避難準備区域」に指定された)。株式会社大和田測量設計の代表取締役、大和田幹雄氏も千葉県に避難した。およそ半月後、広野町から「復旧・復興に参画してほしい」との要請が届く。大和田氏は、いわき市に拠点を置いて業務を再開させることを決め、社員一人ひとりに連絡を入れた。広野町は役場機能を小野町に移していたが、4月、いわき市に再移転し「湯本支所」を開設。同じころ、湯本支所の近くに大和田測量設計も仮事務所を開いた。東日本大震災前に15人いた社員のほとんどが集まり、業務を再開する。必要な機器類は、広野町の元の事務所から運び入れた。その際、街区情報や上下水道等の情報をノートパソコンに詰め込んで持ち出し、町に提供した。災害査定などの業務に当たる一方、5月からは町の「復旧計画」の策定に地元の建設関連事業者として参画(後には「復興計画」策定にも参画)。6月には福島県相双地方振興局がある南相馬市に営業所を置き、復旧・復興関連事業への対応力を強化した。9月30日、広野町の「緊急時避難準備区域」の指定が解除され、住民帰還に向けた「除染」が具体的課題として浮上する。大和田氏は、「測量とは真っ先に現場に入って状況を確認する仕事。まず測量ががんばらなければ、除染もその後の住民帰還も進まない」と考えていた。そして、自社が得意とするGIS(地理情報システム)技術をベースに、「歩行・走行放射線計測システム」や「UAV(無人航空機)による放射線計測システム」などを新たに開発。これらの新技術が、除染範囲の特定など基礎データ収集だけでなく、正確な放射線量に関する情報を町と町民にリアルタイムに提供することに役立った。特に、町と相談して実施した、家屋周辺の放射線量をグリッド状に色分けして地図上に表現し、その情報を町の広報誌に載せて避難所に届けるという放射線モニタリング事業は、住民が帰還を判断する際の貴重なデータとなった。22背景と課題GIS技術を使った放射線計測システムで町と町民に正確・迅速な情報提供ができた福島県広野町復旧・復興関連の仕事をこなす中で復旧・復興関連の仕事をこなす中で技術も、会社も、成長を遂げた技術も、会社も、成長を遂げた株式会社大和田測量設計0202

元のページ  ../index.html#22

このブックを見る