岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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福島県いわき市うおしんの地域への恩返しはこれから人々が多様に結び、喜び合える街に3つのホールを持つ地域最大級の施設。これまで8,000組以上の婚礼を取り持つダンスパーティやライブショー、懇親会など、顧客の要望に応える多様なサービスを用意する再スタートに際し屋号に「うおしん」の名を入れたことは、多くの顧客から好意的に受け止められている。それは、創業以来半世紀以上、「地域の皆さまに喜んでいただく」ためにやってきたことが評価されているからだと考える。そのような期待に応え、「うおしん」の看板に恥じないよう、努めていかなければならない。おもてなしうおしんはスタートしたばかり。地域への恩返しは、これからだ。ブライダル需要が低迷しても、この事業が無くなるわけではない。成人式、還暦のお祝いなどの通過儀礼や、さまざまな記念式典もある。そうした顧客の需要に応えられるプランとおもてなしを提供するのが、使命だと考える。地域の方たちがたくさんの集いの場を持ち、多様に結び合い、喜びが広がる街になってほしいと思っている。そのための「地域の皆さまを結ぶ場」として、事業を継続していきたい。◆同業者と組んだグループ補助金の活用異例なことだが、地域の同業者を含む形でグループを組成し、グループ補助金の交付を受けた。建物・設備の復旧に充てる費用を確保することができた。◆同業の地元企業との業務提携の実現2019年9月、やまたまやと業務提携を締結。これにより経営基盤が強化されただけでなく、衣装部門の一本化、料理部門の仕入れの一本化とメニューの統一、3万人弱の互助会会員へのアクセスなど、多くのシナジー効果が生まれている。◆多目的ホールへのリブランディング専門家派遣集中支援事業を活用し、経営の方向性、事業内容の根本的見直しを行い、結婚式場から多目的ホールへのリブランディングを決断、実行した。ている。うおしんから見ればスケールメリットが見込め、経営の合理化が期待できる。やまたまやにしても、うおしんがある小名浜地区に施設は無く、地理的補完という意味合いがあった。しかし、そうしたメリット以上に重視されたのが「地域社会への恩返し」だった。やまたまや側は「ブライダル需要は低迷しているが、それだけで経営判断すべきではない。成人式や記念式典などを行い、人々が集う場として、地域にとって無くてはならない存在。これまで支えてくださった地域のお客さまに喜んでいただける経営判断をしなければならない」(同社取締役副社長、蛭田房子氏)と考えていた。交渉は円滑に進み、2019年9月、業務提携を締結。うおしんはやまたまやのグループ会社となり、2021年には新社長に生え抜きの齊藤正行氏が就任した。業務提携はさまざまなシナジー効果を生んでいたが、事業の方向性の再検討が必要だとして、復興庁の専門家派遣集中支援事業の活用を図った。2020年10月から翌年3月まで地域ブランド開発の専門家による支援が行われ、「うおしんの強みは何か、どのような価値を地域に提供していくのか」を突き詰めていった。その結果、「うおしんの存在意義は、お客さまと地域に愛され続ける『結の場』にある」ことをブランドのステートメントとし、時代の変遷に合わせ、多目的ホールとして再スタートすることにした。さらに、ブランド名を「おもてなしうおしん」に、ブランドロゴも「お客さま・地域・うおしん3者の強い絆」を表す水引の意匠に改めた。2021年4月、新生「おもてなしうおしん」が誕生。齊藤氏が「地域の皆さまを結ぶ場として、これからも、この地で事業を継続していきたいと願っている。それは、最高のおもてなしでお客さまをお迎えすることでかなうと信じている」と語るように、再スタートが、経営陣にも社員にも事業の原点を再認識させる機会となった。210成果とポイント年に向けて既存のブランド化作業効率・生産性向上事業内容の発信・PR2030

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