岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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未来を語ろう観光業「また行きたい」と思ってもらえる魅力ある商品をいかに生み出していくかが大切。地元の人も観光客も、何度訪れても仙台を楽しみ尽くせる複合施設を目指していきます。(上)仙台市若林区藤塚に建設中の「アクアイグニス仙台」全体の完成イメージ (左)「温泉棟」完成イメージ。地下1,000mから湧出する天然温泉は「美人の湯」とも呼ばれるコロナ禍の今、被災地に限らず日本中の観光業の皆さんが苦しい状況にあります。危機的な状況をどう乗り越えていけばいいか、皆さんのお考えをお聞かせください。赤木 3.11のとき、自衛隊や警察の車両が被災地に入れるように救援ルーも参加できる。共感してくれる人が集まる仕掛けをつくり、地域を盛り上げていきたいです。赤木 「アクアイグニス仙台」の運営会社は、私が所属している仙台の深松組で、地元の銀行とも組んでいます。運営ノウハウは三重の事例を持ってきていますが、われわれは仙台オリジナルのエッセンスを大量に入れています。その一つが、地元の酒造会社と組んだオリジナル銘柄の日本酒造り。地域を大事にしないと地元の人に来てもらえないし、地元の人が来ない施設には他県から人が集まりません。地域を大事にすることは、若い人材の獲得にもつながりそうですね。赤木 すでに「アクアイグニス仙台」で働きたいという方が多くいます。著名なシェフの店で修行したい、今までの店が閉店したので新しいチャレンジがしたい。いろいろな夢を持つ即戦力の方が集まっています。また、宮城県名取市の閖上地区には若いお母さんが多いので、パートで働きやすいように託児所の開園も予定しています。若い人材の流出を防ぐためにも、働きたいと思える環境づくりは大事です。赤木 好文氏の想いトを確保したのはわれわれ地元の建設業界でした。そして、復興関連の公共事業が一段落したのが2019年くらい。やっと落ち着いて、本格的ににぎわいを取り戻す事業スタートできました。「アクアイグニス仙台」の提案を仙台市にしたとき、「これが仙台市の復興の集大成になるね」という話をしてくださって、非常にうれしかったです。今直面しているコロナ禍に関しては、アフターコロナを見越して客席などについて最大限で計画を立てている一方で、ウィズコロナの期間はそこから引き算で対応していく計画を立てています。最初から引き算した状態で計画を立ててしまうと、プラスαを準備する費用が増えてしまうためです。ここ半年で世の中の流れは大きく変わってきました。次の半年後にどうなっているか、今はまだ分かりません。どんな状況になっても、より多くのお客さまに安心して楽しんでいただけるように、あらゆる可能性を考えながら来るべき日まで準備していきたいです。佐々木 この座談会で、コロナ禍で改めて、普段会わない人たちのことを思うようになったなと気が付きました。いつまでも被害者ぶるつもりは無いですが、被災経験は無駄ではなく、辛抱することを覚えました。その辛抱が今また必要な時期です。しかし、この状況はずっと続くものではないはず。2021年は東日本大震災から10年の節目ということで、再訪していただける予定のお客さんがたくさんいたのですが、残念ながら皆さんキャンセルになってしまいました。でも、来年か再来年、世の中が落ち着いたときにまたぜひ来ていただければと思います。当ホテルはトレーラーハウスという特徴から安全を確保しながら宿泊していただけますし、ワーケーションに対応するプランもあります。ウィズコロナの時代でも快適な旅を提供できます。今はもう少し耐えて、力をつけながら、皆さんが安心してお越しくださる日を待ちたいですね。岩﨑 東日本大震災から10年のタイミングでのコロナ禍。今はあのときと同じエネルギーでもう一度立ち向かっていかなければならない時期だと思っています。一方で、今はチャンスのときでもあるはず。被災から10年、いろいろと取り組んできた中で、残ったもの、変えてはいけないもの、大事なものがはっきりと見えてきました。コロナ禍を機に、これまでの10年を土台にして次のステージに踏み出していくことが大事かなと思っています。今までやれなかったことに挑戦して、新しい人たちと手を組んで、釜石をさらに魅力的な町にしていきたいですね。105「アクアイグニス仙台」を仙台を代表する観光スポットにコロナ禍は次の成長に向けたチャンスでもある

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