岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2021-2022 第二章、始動~ニッポンの次世代モデルを目指す
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被災そしてコロナ禍と、次々起こる厳しい現実に立ち向かわざるを得ない観光業。宿泊施設や複合施設の運営に携わる3人には、「被災とコロナ禍を越えて」をテーマに、東北と観光業の未来について語ってもらった。佐々木 宮城県女川町でトレーラーハウス40台を使った宿泊施設「ホテル・エルファロ」を経営しています。東日本大震災直後、女川町には宿泊施設が無く、仙台から通うのに時間がかかっていました。そんな中、「復興スピードを速めるためにも女川に宿舎が欲しい」という声を受けて、旅館経営をしていた4つの事業者が組んで、被災の2年後にトレーラーハウスを使った宿泊施設を始めました。2017年に女川の駅前に引っ越ししまして、今は町一体となって、観光、水産、商業を盛り上げるべく、活動しています。赤木 「ホテル・エルファロ」さんの駅前移転の竣工式に出席させてもらいましたよ。女川は駅から海が見えることを大事にされ、防潮堤を作らなかった。すごく面白い町ができたと思いました。1963年創業の旅館の“名物女将”として、被災経験を語り継ぐ。また、釜石市の2019年のラグビーW杯招致や、旅館が所在する鵜住居地区の東部・根浜地域の復興活動にも精力的で、地元住民に大きな勇気を与える存在となっている。佐々木代表をはじめ女川町で30年以上旅館業を営んでいた4つの被災事業者が集まり、2012年に設立した共同事業体。トレーラーハウスによる宿泊施設「ホテル・エルファロ」を営む。交流・滞在の拠点として、多様な来訪者を迎え入れている。アクアイグニス設立準備室室長として、複合施設「アクアイグニス仙台」に携わる。同施設は温泉と食の総合リゾートとして、建設業を営む深松組などが設立した仙台reborn株式会社が、仙台市東部沿岸部の防災集団移転跡地(※)に整備。2022年4月に開業予定。佐々木 その節はどうもありがとうございました。赤木 当社は、地元の総合建設会社で、温泉と食の複合施設「アクアイグニス仙台」の開業を進めております。「なぜゼネコンが?」と思われるかもしれませんね。当社の社是に「建設業を通じて地域社会の繁栄に奉仕する」という一文があります。仙台市において、被災者の内陸への集団移転を進めた結果、利用されなくなった跡地に「跡地利活用事業者」の公募があり、地域社会の繁栄に奉仕するべく、同公募に手を挙げ、三重県にある複合施設「アクアイグニス」のブランドやノウハウを使って、跡地のにぎわいを復活させるプランを提案。採択されて仙台reborn株式会社という合弁会社を立ち上げ、2022年4月のオープンに向けて準備中です。case4102COLUMN浜べの料理宿 宝来館岩﨑 昭子氏最初に、皆さんが取り組んでいる事業内容をご紹介ください。岩﨑 岩手県釜石市の根浜海岸で、20室未満の小さな宿を営んでいます。67世帯の小さな村で、東日本大震災のときはうちだけが残りました。岩手県の多くの海岸沿いには高い防潮堤ができましたが、根浜海岸には東日本大震災前の松林が残っており、昔ながらの風景を楽しめることが当宿の魅力の一つ。今、地元の子どもたちは「3.11は未来を考える日だね」と言います。私たちも未来に向けての地域の在り方、そして、地域と共に生き残っていける宿業の在り方を模索しているところです。岩手県釜石市ホテル・エルファロ共同事業体 宮城県女川町株式会社深松組赤木 好文氏宮城県仙台市町ににぎわいを取り戻す三者の取り組み未来を語ろうを語ろう観光業佐々木 里子氏アフターコロナを見越してそれぞれの地域の魅力を磨くとき

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