岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
95/145

未来を支える大学生のホンネ実際のところ、どう思う?地域企業にとって重要な課題である「若手の雇用」。彼らは就職についてどう考えているのか。セミナーに参加していた学生たちに、地元への就職に対する本音を聞いてきました。まず話を聞いたのは大学3年生たち。「地元で就職したい?」という問いかけに対しての回答は、なんと全員が「YES」。理由を聞くと、「ずっとこの地域で生きてきたので、社会人になって一人暮らしして、仕事をして……って辛そうだから」とのこと。「やりたいことが決まっているなら、県外や海外も視野に入れます。でも、今はまだ明確にやりたいことが決まっていないから、それなら自分の住み慣れた環境で就職したいなって」と、お互いに「ねぇ?」と同意を求めながら語ってくれた。しかし、その実、就職先の条件についてはシビアに考えているようだ。重視するのは「週休完全2日制」や「残業手当が出るところ」などかなり現実的だ。「先輩が仕事に根を詰めすぎて体調を崩してしまったという話を聞くことがあります。仕事とプライベート・やりがいと労働時間のバランスは重視したいです」。職場の環境については、あまり楽観的な印象を持っていないようだ。「登壇事業者さんのように、社員一人ひとりと向き合い、会社全体で一緒にがんばろうという姿勢の会社は魅力的。自分の能力も生かしつつ、快適に働くことができそうだから」。これからを担う若者たちの本音を真摯に受け止めたい。いざ就職先が決まった4年生の行く先は、地元・県外とさまざまだ。「地元で就職したくて、転勤のない金融機関に就職を決めました。家族も居るし、今の環境で満足なんです」と語ってくれた彼女だが、仲の良い友人たちは皆、県外に出てしまうそうだ。「転勤で仙台に戻ってこれる可能性があるから、今は東京で力をつけたいみたいです」。いつでも戻ってこれる、という思いが逆に彼らを県外就職に誘っているということか。県外に就職が決まった学生に理由を尋ねると、「新しい環境に触れたかった」という声が。「さまざまな仕事を経験してキャリアアップをしたい。そう思うと、やはり東京でないと」と率直な意見をくれた。都市部でキャリアアップしたい者、経験を積んでから地元に戻って身を固めたい者と、描く将来像に応じて、今後の働き方が変わってくるのだろう。就職先を選ぶ際のポイントは何だろうか。「平均残業時間が提示されていれば、注意して見ていました。やっぱり自分の時間は大切にしたい」という声に、周りからも賛同の声。「長く働きたいからこそ、ライフワークバランスを取りやすい職場が理想です」。いよいよ春から社会人としての第一歩を踏み出す彼ら。思い描く将来像に向けて歩んでほしい。時短勤務などの柔軟な働き方1位残業の抑制3位有給休暇取得の促進2位就職先にあるとうれしい制度・仕組みは?(都市部と比べたときの)賃金の低さ1位流行の伝達の遅さ3位仕事の幅に制限がある2位地元で就職するうえで、懸念点は?慣れ親しんだ環境。できれば地元で就職したい3年生キャリアアップや安定収入を考えると、県外に目がいってしまう4年生95

元のページ  ../index.html#95

このブックを見る