岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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人たち。1回、2回来たお客さまを『おかえりー』と自然体で迎えてくれるような町民性なので、お客さまも親戚の家に来るような感覚で足を運んでくださるんです」。そんな女川の魅力に取りつかれ、2週間に1回のペースで来るほど熱心なリピーターは、「女川ウイルスにかかったみたい」と口にする。しばらく来ないと「女川ロスになった」とも。「何もないけど自然があって、何より町の人が待っている。一人ひとりの魅力が女川の特産物だと思います」と佐々木氏は胸を張る。確かにシーパルピアを見ても魅力的な、「ちょっと変わったこと」をする人たちが集まっている。国産エレキギターを製造販売する「GグライドLIDE」(株式会社セッショナブル)の梶屋陽介氏、女川で初めて二郎系ラーメンを出店した「Y夢ume Wをo K語 れatare O女 川nagawa」の山崎達哉氏、「ダンボルギーニ」で一躍話題となった段ボール製造業、今野梱こん包ぽう株式会社の今野英樹氏、スペインでタイル作りを学び「みなとまちセラミカ工房」を開いた阿部鳴美氏、など。佐々木氏もその一人だが、なぜそんなにも魅力的な人が多いのか。「いろんな人が出入りする港町なので、多様性を受け入れるというか、まちの人が警戒心を持たないんですよね。どんな面白いことをしてくれるんだろうと、外から来た人を温かく迎えて磨いてくれるんです」。宿泊客や観光客だけでなく、新しく何かを始めようという人にとっても、寛容なまちなのだ。そうした町民性に支えられてここまで来たエルファロの道のり。今後はグループ補助金の自己資金分の返済が続き、間もなく地代も発生するなど、経営上の課題が控えている。また、災害まで発展する台風や豪雨も続く昨今、入り口が水没し陸の孤島となることもあり、いつ何があっても客の命を守り安全を確保できるように備えることも喫緊の課題だ。女川が復興し、発展していく姿を多くの人たちに見届けてもらうため、「女川に行けばエルファロがあると何年たっても思ってもらえるように、形は変わっても残していきたい」と佐々木氏は決意を語る。1エルファロのフロント外観2トレーラーハウスが並ぶ敷地内は異国情緒が漂い非日常感を感じさせる3部屋は自然光が室内を優しく照らすモダンなイメージ。子どもが喜ぶロフト付きのルームも4エルファロと共に女川ににぎわいを生み出す「シーパルピア女川」5ギターの性能を引き出す「GLIDE」の腕利きクラフトマンたち6段ボールで作った世界でただ1台のランボルギーニ「ダンボルギーニ」7シーパルピア女川のみなとまちセラミカ工房で作るスペインタイル8みなとまちセラミカ工房のショップスペース7658「みなとまちセラミカ工房」シーパルピアの一角に店を構えるスペインタイルのショップ兼工房。作り手の多くは地元の女性たちで、エルファロの部屋番号プレートには同工房のタイルが使われている。体験レッスンも行う。16復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出4情報共有会で得た情報や機会を笑顔のネットワークでつなぐ地域の内外からの支援情報やビジネス情報が、情報共有会に迅速に流れ込み、新ビジネスを成功させられた背景には、女川のオープンだけど親密な人と人のネットワークがベースにあるからですね。成功のポイント何かを始めたい人たちが町へ来訪し交流する拠点へ多様な人々がまちへ立ち寄り、交流し、何かを創発するワクワクする好循環がすでにまちに生まれているようです。人々が交流し滞在する拠点として永続していく経営の覚悟、応援させていただきます。期待するポイント監修委員によるコメントと評価額田春華氏監修委員87

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