岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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訴えてくれた。町も復興工事まで時間がかかる清水町に無償で場所を用意し、背中を押した。ついに申請が通り2012年12月、「女川トレーラーハウス宿泊村EエルL fファロaro」がオープン。「できないと言われたものが、みんなの力でできた」と、協力してくれた事業者をはじめ女川の人たちが喜んでくれ、エルファロはみんなにとっての復興のシンボルとなった。大崎市や仙台市などに宿を取って女川に通っていた工事関係者やボランティアの人たちも、エルファロを拠点にするようになる。観光で復興を支援する遠方からの客も受け入れることで、町とのつながりが生まれ、経済復興の一助となった。4年間営業した場所が復興工事に入ることになり移転を迫られた際、町が女川駅前に面する一等地を用意したのも、そうしたエルファロの功績を認めてのものだ。駅前に新設された商業施設「シーパルピア女川」 「地元市場ハマテラス」に入居した各事業者と同じ、5年間無償という条件も用意された。すでに清水町で4年営業していたが、「皆さんと同じ条件でスタートしてもらおうということで、本当にありがたかったです」。清水町から駅前まで5日間かけてすべてのトレーラーハウスを移動し、2017年8月6日にリニューアルオープン。町民がその様子を動画に撮ってウェブに上げるなど、ちょっとした話題となった。駅に隣接し、道路を渡ればシーパルピアとハマテラスがある。相乗効果が生まれ、商店の人たちからは「今日もエルファロのお客さんが来たよ」「お客さんが増えたよ」と声を掛けられ、宿泊客からは「駅の温泉施設から湯冷めしない距離で、シーパルピアの居酒屋で飲んで千鳥足で帰ってこられる」と好評。「お店の方が酔ったお客さまの肩を抱えて宿まで連れてきてくれることもあり、駅前に来たことで生まれた相乗効果を実感しています」。さらに一歩踏み出せば海と山もあり、トレッキングや水産体験、ダイビングなどさまざまなアウトドアレジャーが楽しめる。宿のコンセプトは「アウトドアリビング」。部屋では家のリビングのようにくつろいで、ドアを開けたらそこには楽しいレジャーが待っているというイメージだ。シーパルピアでの飲食やレジャーと組み合わせた宿泊プランも提案しているが、自ら楽しみ方を見つけて、エルファロを拠点にまち全体を満喫する客も多い。「女川マイスターがいっぱいいるんですよ」と佐々木氏。「女川町全体が人を喜ばせるのが好きな人たちの集まり。どこに行っても、あらかじめ打ち合わせをしていなくても、おせっかいなほどサービスをしてくれるのが女川の玄関口の隣で客を迎え入れまち一体でおもてなし1EL faroスペイン語で「灯台」を意味する。被災後に多くの人々の支援という「灯台」に導かれ新しいスタートを切った自分たちが、今度は希望の光を照らし続けたいという思いが込められている。「シーパルピア女川」 「地元市場ハマテラス」女川みらい創造(女川町女川浜)が運営管理するテナント型商業施設。ショップや飲食店、工房などが入居し、駅から延びるレンガ道を介して日常と非日常の交流が生まれる場を提供している。宮城23復興を見届けてもらうため女川でこれからもずっと86

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