岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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持活動を行う市民グループ「おおふなと花の会」を生むなど、多様な新しい動きが出てきている。キャッセンは、「ハード面の整備がほぼ完了し、『まちづくり』の段階から『まちを守る・まちを盛り上げる』段階に移行したと捉えている。これからは、市民の理解と積極的な参画が非常に重要だ」(臂氏)と考えている。こうした認識に基づき、2019年2月、東京大学からのインターン生と地元NPO法人と共に、「大船渡まちもり大学」を立ち上げた。「まちを守る・まちを盛り上げる=まちもり」の次世代の担い手の育成を目指す学びの場なのだが、早くも“成果”が表れた。インターン生がまちもり大学で語ったアイデアに触発された高校生たちが企画・プロデュースし、2019年12月22日、「キラキラ☆冬の学園祭」を開催したのだ。キャッセンの代表取締役、田村滿氏は、「これまでの中で最も成功したイベント」と高く評価し、次のように語る。「2019年の『冬の学園祭』はプレイベントで、2020年はもっと本格的な学園祭になるでしょう。これを積み重ねていくと、発表と交流の場を求めて、県内・県外の高校生たちが『冬は大船渡へ行こう』と集まってくるかもしれません。自らモノ・コトをつくり出したのはとても意味のあることです」。こうして、キャッセン大船渡エリアが「住民が集い、チャレンジが生まれるまち」になりつつある。そして、そのチャレンジが未来の大船渡につながっていくと、田村氏は考え、こう語った。「将来の大船渡にとって必要なのは、国内の都市圏や海外から“外貨”を獲得することです。大船渡にしかないモノ・コトを求めて、世界中から人が集まる大船渡にしたい。そのためにも、たくさんの人が『考える! やってみる!』を繰り返し、まちを成長させていかないといけないと思っています」。「まちを守る・まちを盛り上げる」段階に移行した田村滿氏岩手県内の3つの自動車学校のほか、農地所有適格法人、自ら設立した起業家を育成する会社など、気仙地域でいくつもの企業を経営している。2016年3月、キャッセンの代表取締役に就任。復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出12ショッピングモールではなく、「商店街」を意識している3代表の田村氏は「サケが故郷に戻ってくるように、大船渡を、若い人が人生経験を積んで戻ってくるような場所にしたい」と語る45さまざまな取り組みのアイデアの源泉にもなっている「大船渡まちもり大学」6「キラキラ☆冬の学園祭」の準備風景7入居する店舗とも良好な関係を築いてきた8構想を語るタウンマネージャーの臂氏5468715先導者の変化を恐れない姿勢が地元全体を動かした津波復興拠点整備事業の導入からエリアマネジメント資金の確保までの取り組みが成功条件。これに先導的人材と経営者の努力が功を奏して地元高校生を巻き込んでいき、地元が動き出したのだと思います。成功のポイント息抜きの場を提供し持続的なまちづくりを自主企画の連続だけではやがて疲れてしまう可能性があります。住民の居場所(サード・プレイス)づくりと小さな観光地づくりが自然な交流を生むような、日常的な「仕掛け」づくりも期待したいです。期待するポイント監修委員によるコメントと評価柳井雅也氏監修委員83

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