岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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大船渡市の中心市街地である大船渡駅周辺地区は、東日本大震災時の津波で甚大な被害を受けた。この駅周辺地区の復興まちづくりに当たって大船渡市は2012年度、①土地区画整理事業を進めつつ、換地等で駅の海側区域に市有地を集約し、②その市有地(10.4ha)に復興を先導する市街地をつくるために「津波復興拠点整備事業」を導入すると決めた。行政・各種団体・住民らによるワーキンググループの2年近い議論を経て、2014年7月、意思決定機関として「大船渡駅周辺地区官民連携まちづくり協議会」が立ち上がる。津波復興拠点整備事業区域(以下「拠点区域」)で事業を予定している2社4団体と、市、商工会議所、大和リース株式会社(市が選定した「エリアマネジメント・パートナー」)で構成する同協議会は、以下のような方針を決定する。①気仙地域(大船渡市、陸前高田市、住田町)の中心地として、商業機能と交流機能を重視した土地利用を図る②大規模津波の際、浸水が想定されるため、住宅、教育機関、医療機関等の立地を制限する③拠点区域を先行整備する④拠点区域は9つの街区に分割して事業用定期借地権を設定し、事業主体に賃与する⑤事業者、市、商工会議所、金融機関等からなる「まちづくり会社」を設立し、拠点区域全体のエリアマネジメントを展開するそして、2015年12月、駅周辺地区復興まちづくりの推進主体となる「株式会社キャッセン大船渡(以下「キャッセン」)」が設立された。 キャッセン大船渡商業集積街区と呼ばれるこのエリアでは現在7つの街区が完成している。そのうち4つの街区は地元企業3社と商店街協同組合がそれぞれ1街区の借地人となり、ホテル(大船渡プラザホテル)、ショッピングセンター、商店街(おおふなと夢商店街)、ファクトリーショップ(かもめテラス)がオープンした。残り3つの街区はキャッセンが借地人となり、自ら運営を行っている。2017年4月には2つの街区でフードヴィレッジとモール&パティオがオープン。いずれもキャッセンが津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金を活用して施設を整備し、地元の被災商業者を中心に29の店が出店した。また、2018年5月には、ワイナリー大船渡駅の海側区域を復興を先導する市街地に7つの街区がオープン3つの街区の運営も担う津波復興拠点整備事業東日本大震災後に国土交通省が創設した制度で、復興の拠点となる市街地の整備を緊急に行えるよう、基本的に地方自治体が財政負担しなくても事業が実施できる特例措置。2030年復興への歩み[来客数(万人)]※4〜翌3月●3月大船渡市が、キャッセン大船渡を「都市再生推進法人」に指定●5月8街区「キャッセン・クリエイティブファーム」オープン●11月地域づくり表彰で「日本政策投資銀行賞」を受賞2018年●12月地元高校生を主体とした「キラキラ☆冬の学園祭」を開催2019年2015年●12月株式会社キャッセン大船渡、設立2012年●「津波復興拠点整備事業」の導入を決定 「大船渡地区津波復興拠点整備事業 まちづくりワーキンググループ」設置2013年●「大船渡地区津波復興拠点整備事業 ワーキンググループ」設置2014年●7月「大船渡駅周辺地区官民連携まちづくり協議会」発足復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出15153001052025[SDGs]2030年に向けてその時々の大船渡のライフスタイルに適合した中心市街地であり続けるために、住民らによる評価とフィードバックのシステムを確立させたい。評価とフィードバックが継続して続く街でありたい【目指していくゴール】2016年●2月復興庁が「大船渡市まちなか再生計画」を認定●3月3街区「キャッセン・ステイ」オープン(大船渡プラザホテル)●6月6街区「キャッセン・大船渡ショッピングセンター」オープン津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金2017年●4月2街区「キャッセン・フードヴィレッジ」、5街区「キャッセン・モール&パティオ」、4街区「キャッセン・ドリームプラザ」オープン(おおふなと夢商店街)●11月1街区キャッセンファクトリー「かもめテラス(さいとう製菓総本店)」オープン●12月第12回「日本まちづくり大賞」を受賞221820(見込み)キャッセン大船渡商業集積街区「キャッセン」とは、気仙地域の言葉で「いらっしゃい」の意味。2街区、5街区は、鉄骨平屋建ての分棟で、将来の外部環境の変化に合わせて更新しやすいように工夫されている。81

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