岩手・宮城・福島の産業復興事例集30 2019-2020 東日本大震災から9年~持続可能な未来のために
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取締役に就任してからの5年間で非常に多くの施策を進めていることが分かる。「常に何かを発信していかなければ、お客さまや地域の皆さま、従業員に対しても、花巻温泉がさまざまな取り組みに挑戦している会社であることを分かってもらえません。エレベーターやボイラーの修理など、目に見えない部分の改修も当然ですが、形として目に見えることをしていかないと成長発展はないと考えています」と安藤氏。現在も、6期にわたる客室改装計画の3期目の最中で、外観も1施設ずつ改装を進めている。2015年には創業88周年を盛大に祝い、2017年には節目の90周年を迎えた。100周年に向かうこの先の目標は、「2030年までに東北一のホテル・旅館になること」。顧客の評価、従業員の満足度、経営状態、あらゆる面での東北一を目指す。「そのためにすべきことはたくさんあります。一日一日点数を積み上げていかないといけません」と安藤氏。2016年には県内で国民体育大会「希望郷いわて国体・希望郷いわて大会」が開かれ、全国から多くの宿泊客を呼び込んだ。当時の天皇皇后両陛下、皇太子殿下はじめ皇族が宿泊し、花巻温泉の名が海外にも広がった。インバウンド対応にも力を入れている。2018年8月に花巻と台湾を結ぶ国際定期便が就航し、台湾からの観光客が増加したことを受けて、従業員向けインバウンドセミナーの開催や、2018年12月には敷地内に外国人向けのドラッグストアをオープン。今後ますますの需要増加が見込まれる。そうした時代の流れにも機敏に反応し、進化を続けていく花巻温泉。「100周年で終わりではありません。その先の未来もずっと自信を持って、この地でビジネスができる環境づくりを行っていきます」と安藤氏。佐々木氏も「社長は改善改革のスピードがある。その思いを社員がいち早く理解して、同じ方向を向いて気持ちを一つにして取り組んでいきます」と意気込んだ。従業員全員が常に持ち歩くクレドの表紙に書かれている言葉は「One Heart、one mind こころはひとつ」。東日本大震災を乗り越え強固な絆が育まれた経営陣・従業員が一丸となって、「東北一のホテル・旅館」実現に突き進む。全社員が一丸となって東北一のホテル・旅館に14つの宿泊施設を有する花巻温泉21960年に開園したバラ園。約450種のバラが楽しめる3花巻温泉の湯は水分が体に浸透しやすい優しい湯4クレドを規範におもてなしの心を体現する従業員52014年に代表に就任した安藤氏6東日本大震災当時、陣頭指揮に当たった佐々木氏782019年に新設した温泉ベーカリー。名物は「花巻温泉あんぱん」9従業員一人ひとりに配布されている「クレド」復興五輪新分野/新市場/海外進出観光振興/地域交流拡大事業承継被災地での再生・創業/被災地への進出5698714従業員が一丸となれる目標でコンピタンスを強化未曽有の事態にも「お客さまを喜ばせる」ことを大切にし、新たなクレドの作成や「東北一のホテル」という分かりやすい目標の設定により、従業員がさらに強いコンピタンスを獲得した様子がうかがえます。成功のポイント多様性の推進で「おもてなしの精神」をバージョンアップ多様な顧客ニーズに応えることで、新たな遊び場の新設やインバウンド対応で成果を上げ、次の100年も顧客を喜ばせ続けられる「おもてなし精神」のさらなるバージョンアップを期待しています。期待するポイント監修委員によるコメントと評価田村太郎氏監修委員79

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